弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第237回
裁判で侮辱された

またまた、読者からの質問です。

 私は現在、一戸建てを貸していて
建物明け渡し訴訟中です。
相手の弁護士の答弁書や証拠を見て、
でっちあげや嘘で驚いています。
私がしていないのにしたと書き、
証拠も提示しないで、人格をかなり否定しています。
裁判は公開性なので、名誉毀損にあたると思います。
弁護士が、証拠もなく、
裁判だからと原告の人格を酷く書くことは
許される事なのでしょうか。

 裁判になると、お互い自分の立場からすれば、
相手は嘘つきですから、
相手の言うことに、かっとなるということも多いです。
お互いエキサイトして、
相手を非難し合うということもあります。
裁判では、当事者が、
お互いの主張、記憶、証拠に基づいて、
自由に訴訟活動をして、
それを中立な裁判官が判断することとなっています。

そこで、裁判上では、
通常の社会生活では、
あまり妥当でない表現を使うことも
ある程度許されています。
しかし、裁判に関係なく、
相手方の人格を非難したり、
故意に相手をひどく中傷したりする場合には、
名誉毀損となると考えられています。
この手の裁判は、結構あるようです。

過去の裁判例では、
裁判において、
「虚偽文書を作成した」
「(証拠を)隠匿又は廃棄した」
「私利私欲に捉われ、無理難題をふきかけている」
などと主張して相手を非難したことが
名誉毀損になるか争われた事案がありますが、
名誉毀損にはならないとされています。

逆に、裏付ける証拠もないのに
「犯罪に該当する行為を行なった」
と断定した主張などが名誉毀損になると判断されています。
名誉毀損になる場合もありますが、
ならないと判断されることが多いと思います。
名誉毀損の裁判は、一般的に、
労力がかかる割に、認められるかどうかもわからず、
認められる金額も数万円から数十万円と少額です。

相手は、裁判上不利だから、
あなたを非難してごまかそうとしているだけだと思います。
そのようなことに惑わされて、
本来の裁判とは関係ないことまで戦線を拡大してしまえば、
収拾がつかなくなってしまい、
裁判官や弁護士もやる気を失い、
裁判は遅くなり、それこそ相手の思う壺です。
それよりは、裁判に勝てるよう必要な主張をし、
必要な証拠を提出して、裁判に勝訴し、
相手を追い出してしまう方が
相手との縁も切れてよいと思います。


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2007年3月1日(木)

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