第236回
経営者による買収(MBO)に気をつけろ
以前、会社を上場させていると、
上場にかかるコストを負担する上に、
敵対的買収の危険にさらされる可能性があり、
株主に損な行動をとると、
株主代表訴訟を起こされる可能性もあるので、
市場から資金調達の必要性がないならば、
非上場ということも一つの選択だという話をしました。
上場のデメリットとしては、
株価を下げないよう
短期的な視野での経営が求められ、
長期的視野に立った経営を
しにくいということもあります。
上場を廃止するときの手法として、
最近、経営者による
企業買収(いわゆる「MBO」)という方法が取られます。
以前のコラムで、これはこれで問題があると指摘しました。
その問題が最近かなり表面化しているようです。
どういうことかと言うと、
MBOは、経営者が
現在の株主の株式を買い取ることによって、
企業買収を行ないます。
ここで、経営者は株主から株式を買い取るのですから、
株の値段はできるだけ安い方がいいわけです。
ところが、株主は、
株を売るわけですから、
できるだけ高く売りたいわけです。
ここで、株主と経営者は利害が対立することとなります。
経営者の決めた値段で売りたくなければ、
売らなくてもいいので、
株主と経営者は、一見対等のように思えます。
また、最近3ヶ月の株価を見れば、
その値段で市場で売買されていたのだから、
その値段で買えば適正な価格とも思えます。
しかし、経営者は、会社の内部にいて、
会社内部の情報を詳しく知っています。
また、その情報を自由に加工することもできます。
財務内容や営業方針を控えめにすれば、
株価は下がります。
会社経営にとってプラスの材料を隠せば、
やはり株価は高くなりません。
経営者が安く企業買収しておいて、
再度株式公開(IPO)をして、
経営者が利益を得るとするならば、
株主にとっては、詐欺みたいなものです。
なかなか対策は難しいですが、
これだけ騒がれているのですから、
証券取引所などで、
一般投資家を保護するための
ルールを作成することが必要だと思います。
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