弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第184回
あげた後でそれはないよ

一般に、物をあげる、
即ち、贈与は、
無償でなされる対価を期待しない行為です。
しかし、「無料より高いものはない」
という言葉のとおり、
実際、贈与がなされる場合には、
多かれ少なかれ、
相手に見返りを期待してなされることが
少なくありません。

世間一般で、一番多い贈与は、
親が将来的に面倒を見てもらおうと思って、
長男の自宅の建設資金を出してあげたり、
土地をあげたりするケースだと思います。
それにもかかわらず、
もらってしまえばこっちのものとして、
親の面倒は見ないことはおろか、
虐待と思われるようなことをするケースもあります。
こういうケースで、
あげたお金や土地を取り返せないか
ということが考えられます。
もう既にあげてしまっているので、
前回の書面によらない贈与の取り消しはできません。
しかし、財産をあげるときに、
子供が親の面倒を見ることを約束した場合には、
「負担付贈与」と言って、
その約束(負担)が守られないときには、
贈与契約を解除することができるのです。

そうは言っても、
親子間の贈与は、
口約束でなされることが多く、
いちいち書面で、
「親と同居し、面倒を見ることを約束します」
などと書かれていることは少ないと思います。
そもそも、親子では、
そのことは当然の前提でなされるのであって、
「面倒見てくれ」とも
「面倒見る」とも、
口に出さないのが普通かもしれません。
そういう場合に、
全く贈与を取り消せないかというと、
そうではありません。
過去の判例では、養子に対し、
将来面倒を見てもらうつもりで
土地を贈与したところ、
その後、関係がうまく行かなくなった場合に、
土地の贈与の取り消しが認められています。

それから、娘の夫に
歯科医になるための
学費・生活費を贈与したところ、
夫が他の女性と交際するようになったケースでも、
贈与の取り消しが認められました。
「あげた後で、それはないよ。」
というときに、
贈与を取り消して
返してもらえることもあるのです。


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2006年8月24日(木)

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