弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第137回
もらっていない退職金も離婚で分与

前回の離婚のときの財産分与の続きです。
50代より上の熟年離婚が増加しています。
最近は、以前説明した年金分割待ちで、
若干熟年離婚が減少しているようですが。
この熟年離婚が増加したため、
夫の退職金が離婚の際の財産分与の対象となるかが裁判上、
だいぶ争われました。

30代より下の若年離婚では、
退職金はもらえるかどうかもわからないし、
もらえても少ない額なので、あまり問題とならないのですが、
50代以上、特に定年間際では、
多額の退職金がもらえる可能性があるので、
離婚する奥さんの方からすれば大問題です。
特に、熟年離婚の場合、
奥さんが専業主婦であることが多く自分の収入がないので、
なおさら問題となります。

退職して、ご主人が退職金をもらう権利ができた場合には
当然、財産分与の対象となり、
半分を分けてもらうことができます。
まだ、退職していない場合でも、
あと2,3年で、定年退職することが確実な場合には、
定年退職したときの退職金額で退職金を分けることとなります。
これらの退職金は全額が財産分与の対象となるわけではなく、
退職金をもらえば税金がかかりますから、
その金額を引いた額が財産分与の対象となります。

それでは、退職までに、
あと10年はあるという場合はどうなるかと言うと、
(離婚のときに自己都合退職するとしたらもらえる退職金の金額)
から
(結婚したときに自己都合退職したらもらえる退職金の金額)
を引いて、
ここからさらに退職金にかかる税金を引いた金額が
財産分与の対象となります。
要するに、離婚するときに会社をやめたと仮定して
退職金がもらえるのであれば、
実際には退職金をもらっていなくても、
財産分与の対象となるのです。

ただ、定年退職までの期間が長い場合、
自己都合退職の退職金額を元に財産分与が計算されますから、
経済的には、定年退職まで、あるいは定年退職間近まで、
離婚を待った方が得だということになります。


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2006年3月9日(木)

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