第99回
立証責任というのは
前回の当事者が
両方とも自分の主張を証明できない場合は
どうなるかという話の続きです。
みなさん、立証責任という言葉を
聞いたことがあると思います。
普通の人は、立証責任というのは、
自分の主張は証拠(裏付け)がなければならない、
即ち、裁判で主張したことは
証明しなければならないことと、
何となく考えているようです。
ただ、この考え方だと、
当事者双方が自分の主張を証明できない場合は
引き分けかということとなってしまいます。
しかし、裁判は、
勝ち負けをつけるもので、
引き分けというのは余りありません。
例を挙げて説明します。
AさんがBさんに
昨年の10月6日にお金を貸したのに返さないので
返して欲しいと裁判を起こしました。
ところがBさんはその日は、
旅行に行っていたので
Aさんからお金を借りるはずがないと
アリバイを主張しました。
訴訟で証拠調べをしても、
Aさんのお金を貸したということも、
Bさんの旅行に行っていたというアリバイも、
証明されませんでした。
この場合、Aさんは、
お金を返せという請求をしているので、
Aさんがお金を貸したという
事実の立証責任(証明責任)を負っています。
だから、裁判は、
Aさんがお金を貸したことを証明しない限り、
Aさんは裁判に勝てません。
Bさんがアリバイを証明できるかどうかは
この裁判では関係ないのです。
厳密な立証責任というのは、
その事実が証明できないと、
裁判が負けてしまう事実のことを言います。
一般的に、請求する方が
立証責任を負うことが多いです。
ただ、上の例で、
Bさんがお金は借りたけれども返したと主張すると、
返した事実についてBさんが
立証責任を負うこととなります。
Bさんが返した事実を証明できなければ、
Bさんは裁判に負けて
お金を返さなければならないということとなります。
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