第91回
負けてからでは遅すぎる
弁護士は、法律相談を受けることが仕事なので、
多数の法律相談に乗ります。
その中には、裁判に負けてからの相談も結構あります。
中には、最高裁まで争って敗訴したケース、
控訴期間が経過して
敗訴判決が確定したケースの相談もありました。
敗訴判決が確定しまうと、
相手が、犯罪により勝訴判決を得たなど
極めて例外的な場合しか
判決を争うことはできません。
したがって、
敗訴判決が確定してしまった後に
他の弁護士に相談しても、
相談された弁護士もどうしようもありません。
確定してから弁護士に相談するくらいであれば、
敗訴判決が確定する前に相談する必要があります。
今の裁判制度では、
1審で、よく事実関係を調べ、
2審では、新しい証拠はないか、
1審の裁判官が証拠の評価や法律の判断を
間違っていないかをチェックするだけです。
どちらが勝つか微妙な事案では、
2審で、判決がひっくり返る可能性がありますが、
なかなかひっくり返すのは難しいです。
証拠についても、
1審で出せたはずの有利な証拠が
1審で出しておらず、
2審で初めて出した場合には、
後から作ったのではないかと疑われてしまいます。
また、裁判では、
主張に合わせて証拠を提出していきますから、
1審での主張を2審で変えると
主張や証拠に矛盾が生じ、
裁判官から信用を得られなくなってしまうことになります。
だから、1審で依頼した弁護士に任せきりにしないで、
依頼している弁護士が裁判で
どういう争いをしているかわからず怪しいと思ったら、
1審で判決が出る前に、
他の弁護士に相談したほうがよいかもしれません。
このような問題は、
裁判前に自分で交渉していて、
訴訟を弁護士に依頼する場合にも起こります。
最初に自分で交渉したときに主張が固まってしまうと、
訴訟になったときに弁護士が付いて、
他の主張や構成を取った方が有利だったと思っても、
当初の主張を変えることとなるので、
後から有利な主張ができないこととなってしまうのです。
即ち、弁護士に依頼するのが後になればなるほど
弁護士がやれることが少なくなってしまうのです。
結論的に言えば、
トラブルが発生した際には、
判決が確定した後よりは確定する前に、
1審判決が出た後よりも1審判決が出る前に、
訴訟を起こされた後よりも、訴訟になる前に、
契約などを交わした後よりも、契約書を交わす前に、
話し合いをした後よりは話し合いをする前に、
というように
弁護士にはなるべく早い段階で
相談した方がよいということになります。
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