弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第77回
法定相続分通りのつもりでも

前回、自分が死んだときに、
2人の子供たちに、法定相続分通り、
遺産を分けるつもりであれば、
遺言書はいらないかもしれないと書きました。

しかし、実際は、
子供たちに法定相続分通りに
分けるのだとしても、
遺言書は書いておいた方がよいのです。

相続人が2人の子供だけの場合、
遺言書がなければ、
民法の定める法定相続分は2分の1ずつなので、
兄弟仲良く、半分ずつになるから
争いようがないと思われるかもしれません。

しかし、遺産が現金ばかりでなく、
遺産の中に土地や建物があった場合、
(1)この土地や建物を売却して代金を分けるのか、
(2)どちらかが取得して、その対価を他方に支払うのか
という分け方で揉める可能性があります。

仮に、土地や建物は
一方が取得することで分けようとした場合、
その2分の1の対価はいくらがよいのか、
その基準は時価なのか、
公示地価なのか、路線価なのか、
固定資産税評価なのか、
売却したときの譲渡所得税を考慮するのかなどなど、
簡単に分け方が決まりません。

遺産に、自分の経営する会社の株がある場合にも、
どちらが経営を承継するのか、
株はどちらがどれくらいの割合の株を取得するのか、
株の対価はいくらにするのかなどで、
揉める可能性があります。

遺産が、不動産や会社とは違って、
簡単に2分の1ずつ分けることが可能な
現金と預金だけだったとしても、
遺言書がないと揉める可能性があります。

というのは、遺言書がない場合、
寄与分と言って、亡くなった方が生きているときに、
お金を援助したり、病院の面倒をみたりした人には、
遺産分割の際に、遺産形成に寄与した分を
多く請求できる権利が認められているからです。

それから、生前、一方の兄弟だけ、
家を建てる費用をもらっていたような場合には、
特別受益と言って、遺産分割の際に、
生前もらった金額を差し引くという制度があるからです。

単純な遺産分割でも、
自分には寄与分がある、
あるいは相手には特別受益がある
という主張が可能なので、遺言書がないと、
揉めてしまう可能性があるのです。


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2005年7月14日(木)

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