第53回
年功序列賃金の幻想
年功序列賃金が成立するには、
前提条件がありました。
それは、
1.会社が売上を常に増加させて行くこと
わかりやすいように、従業員の人数が固定だとします。
従業員全ての給料を年功序列にするのであれば
それに見合う売上の増加がなければなりません。
2.会社の従業員が常に増加して行くこと
通常会社組織はピラミッド型の構成を取っています。
上の人数が常に一定であればよいのですが、
実際は上の人がすぐやめるわけではないので
それを支えるだけの若くて給料の低い従業員が
入ってくる必要があります。
3.経験の長い方が能力が高いと言えること
年功序列賃金も全く成果というか、
従業員の能力を考慮せずに
年齢だけで給料を高くしたわけではありません。
メーカーでは、熟練工や職人は
一般に経験が長いほど技術に優れていると言えたし、
営業でも、業界内の慣習や顔がきくこと、
取引先との貸し借りなどが重要視された時代では、
経験が長い方が能力が高いと言えたのです。
ところが、みなさんご存知のとおり、
バブル崩壊、日本経済の成熟化、
少子化による市場縮小などにより、
売上を増加させていくことも、
従業員を増やしていくことも難しくなりました。
年功序列賃金を取ったとしても、
25年から30年後に今の従業員を
そのまま維持できるほど売上があるのか、
会社が存続しているのかも
不確定な時代になったのです。
また、IT時代の到来など
技術革新のテンポの速さ、
商品サイクルの短さ、
外国企業まで巻き込んだ競争の激化は、
パソコンに対応できない
中高年の従業員の価値を著しく下げ、
業界内の慣習や人間関係なども
あまり役に立たない状況になってしまったのです。
こうなってくると、
年功序列賃金制度を維持することは
不可能になってきます。
年功序列賃金は、
昭和30年代から平成2年くらいまでの
日本経済が長期にわたり
右肩上りでうまく成長していったときに、
たまたま成立した幻想だったのです。
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