弁護士・高島秀行さんの
読んだらわかる訴訟の話

第53回
芸能人の名誉・プライバシー

最近、芸能人などの有名人が、
週刊誌やテレビ局に対し、
プライバシー侵害や名誉毀損などを理由として
損害賠償請求訴訟を起こし、
請求が認められたという報道を耳にすることが
多くなっていると思います。

芸能人とマスコミは、
芸能人はマスコミに取り上げてもらって有名となり、
マスコミも芸能人の話題で販売数を増やしたり、
視聴率を稼いだりするという
持ちつ持たれつの関係にあるので、
以前は、あまりこの種の訴訟はありませんでした。

しかし、芸能人の方の権利意識が高まったからか、
特定の週刊誌などはあまりにひどいからなのか、
最近は、そのような訴訟が増えています。

賠償額も、以前は、
慰謝料100万円などと言われていたのですが、
それでは、芸能人の書かれ損、
週刊誌等の書き得になってしまうなどの理由から、
最近は、500万円以上の慰謝料が
認められるようになりました。

芸能人は、
マスコミに取り上げてもらって
収入を得ているのであるから、
プライバシーはなく、
視聴者や読者が知りたいことは
全て公開しなければならないし、
何を書かれても仕方がないと
考えている人はいませんか?
その考え方は誤りです。

プライバシー侵害や
名誉毀損と思われる記事が許されるのは、
(1)社会問題として重要で、
(2)その記事が社会の利益のために書かれ、かつ、
(3)真実である場合です。

基本的には、政治関連、犯罪関連に関する場合が
(1)(2)に該当します。
いくら読者や視聴者が関心を持っていたとしても、
単なる好奇心を満足させるだけに過ぎないような内容のものは
プライバシー侵害や名誉毀損となります。

芸能人の離婚問題、愛人問題、不倫問題などは
基本的に(1)(2)に該当しませんから、
真実であっても、取り上げるだけで
プライバシーの侵害や名誉毀損となります。


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