第171回
現金取引でもリスクを負う場合があります。

一般に、商品の引渡と同時に代金を受け取る場合を
現金取引と言います。
商品を受け取ってから、1ヵ月後の支払でも、
現金で支払えば現金取引と言えるような気もしますが、
一般には、商品を受け取ってから
一定期間後に代金を支払う売り方を掛売りと言い、
この掛売りに対する概念が現金取引です。

普通、債権回収の話をする際には、
現金取引であれば、
債権回収の問題が生じないという話をします。
(代金回収の問題については、
一般には「債権管理」とか
「債権回収」という言葉が使われており、
今後はそういう言葉を使います。)

現金取引であれば、
商品の引渡と同時に代金を受け取れるわけですから、
代金を取り損ねることはないわけです。
だから、債権回収の話をする際に
現金取引が一番確実だというのは間違っていません。
それにもかかわらず、まず前金の話をしたのは、
現金取引でもリスクがある場合があるからです。

現金取引の典型である店舗で商品を売る場合には、
商品と引き換えに代金をもらうことでリスクはありません。
しかし、例えば、工場に設置するロボットを輸入して
売ることを考えてください。

現金取引だから安心と思っていても、
輸入の手続を取って、いざ引渡そうとしたら
会社が倒産してしまったらどうでしょうか?
確かに、商品を渡したにもかかわらず代金が取れない
という事態は回避できます。
しかし、輸入した商品をうまく他に転売できなければ、
無駄になってしまい、
輸入代金など輸入にかかった費用分損してしまいます。

現在は商品が売れない時代ですから、
商品が残れば売って損を出さないようにすることが
必ずできるというわけではありません。
まるまる無駄になってしまうかもしれないのです。
だから、現金取引だからといって、
リスクがないとは言えないわけです。
全部が無理でも、一部なら前金で
代金をもらうことも可能かもしれません。
これも検討の価値は十分あります。


■今週の宿題 ■
売買契約は、契約書など書面を交わさなくても、
口約束で十分有効である。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


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2003年5月15日(木)

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