第44回
貸主が借主の物を勝手に取り上げることはできません。

先週の宿題は、
「借主が約束どおりお金を返済していないのであれば、
貸主が借主の持っている時計を
借金の形(かた)に取っていったとしても貸主は許される。」

かどうかでした。

答えは、×です。許されません。
確かに借主が借金を返さないのは悪いことです。
しかし、貸主が借主の財産を
勝手に取っていくことは許されないのです。

この貸主が借主から借金の形として時計を
取り上げる行為を自力救済と言います。
自力救済は、法律上の手続きを取らないで、
自分の権利を実現することです。
自力救済は、法律上は原則として禁止されています。
だから、宿題の事例の、貸主が借主の持っている時計を
借金の形に取って行く行為は、窃盗罪になります。
貸主だから、お金を返してもらう権利があるからと言っても、
何をやっても許されるわけではないのです。

権利を実現するためには
法的手続きによらなければならないのが、法律上のルールです。
借主の時計によって返済を受けるには、時計を差し押さえて、
競売にかけて現金化して、そこから返済を受けることとなります。
これを実際やるとすると、
費用・時間・労力がかかるので面倒なのですが、
貸主は回収のためなら何をしてもいいことになったら、
そちらの社会の方がかえって大変なこととなってしまいます。
もちろん、借主が借金の返済として
時計を渡すことに同意していれば問題ありません。
その場合には、借金のいくらのうちの
いくらの返済分として渡したか、
明確にしておく必要があります。


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2002年10月28日(月)

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