第10回
契約書を交わさないと思わぬことになります。
契約書を交わさないとどうなるか、
お金を貸した場合でご説明しましょう。
AさんがBさんに、9月11日に、100万円を、1年後に利息を10%付けて、
返してもらうという約束で、お金を貸しました。
1年後、AさんはBさんに、お金を返して欲しいと言いました。
Bさんが素直に、110万円を返してくれれば、何問題はありません。
ところが、AさんがBさんにいくら請求しても返してもらえません。
こんなケースでどうするかというと、日本は法治国家ですから、
トラブルは裁判で解決しなければなりません。
裁判になった場合にBさんの対応としては、次のことが考えられます。
(1)借りた覚えがない。お金も受け取っていない。
(2)お金は受け取ったけれど、これは借りたのではなくもらったんだ。
生活に困っていると話したらくれたんだ。
あるいは、事業のための出資金で、
事業が軌道に乗って利益が出るようになったら
配当を渡せばいいんだ。
(3)借りたけど、生活に余裕が出たら返せばよいと言われた。
(4)借りたけど、利息の約束はなかった。
Aさんとしては、(1)のように言われた場合、
お金を渡した証拠を出さなければ裁判で負けてしまいます。
要するにお金を返してもらえないということになってしまいます。
もしお金を渡したということを立証するのに
借用書(金銭消費貸借契約書)がなければ、
領収書や銀行での振込書などが証拠として必要になります。
(2)、(3)、(4)については、
状況証拠を積み上げて立証するほかありませんが、
なかなか言った言わないの話で決め手がありません。
言った言わないの話になってしまうと、
裁判は請求する側に立証責任がありますから、
請求する側に不利になるのです。
AさんはBさんを信頼して100万円も貸したのに、
Bさんが単に悪い人で、
あるいはBさんはもともとよい人であったけれど
何らかの事情があって、うそを言い出すと、
Aさんの方が損することになってしまうのです。
だから、契約書を交わすことが必要なのです。
もし、このケースで、お金を貸すときに契約書を交わしていれば、
Bさんは、何かの事情があったとしても、
契約書があるのでうそはつけないことから、
正直に返せない事情を話して
2人の人間関係も壊れることはなかったとは思えませんか?
契約書を作成しないと思わぬことになることもあるのです。
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