第123回
さあ、開店です、結果はどう? その3
開店3日目 クレームが多い。すぐ直さなければならない事は
開店初日412千円、
2日目は何とかそれを上廻る425千円を記録しました。
朝から通しで閉店まで、
松井さんと奥様は働きました。
家に帰ったのは午前2時。
シャワーを浴びて、日本茶を2人ですすって
始めて会話らしい会話をかわしました。
2人の共通した認識は3つありました。
今日までの2日間の売上がいつまでも続く訳がない。
1週間たって落ち着いたら、
まず、損益分岐点を新たな資料で作り直して
経営の目標をはっきりさせる事。
2つ目は、人財の育成を出来る限り、早める事。
それには3日間で将来の社員候補を選んでおく事。
3つ目は、今日までのお客様の評価を多く集め、
すぐ直せるものはすぐ直す事。
の3つでした。
身体は綿の様に疲れているのに
実に冷静な判断をしています。
このような判断ができるようになったのは、
150日間と云う長い期間、
開店までに様々な経験をしたお陰です。
経験は決して自分を裏切らないのです。
3日目、松井さんが店に出勤すると、
本社の武藤専務が5枚のメモを持って
急ぎ足で来ました。
そのメモには松井さんの顔色が
一瞬の内に青ざめる事が書かれていました。
「キャリオカ」が松井さんの所属する
不動産業の会社によって経営されている事を
近隣の人や得意先は知っていたので、
「キャリオカ」に対するクレームを
不動産業の会社に送った方がいたのです。
クレームの内容は
(1)買いたいパンがすぐ売り切れた
(2)オーダーを間違えてもあやまらない
(3)トイレが汚れていた
(4)店の前がタバコのすいがらで汚れていた
(5)お祝いの花が隣りの店のショーウィンドウをふさいでいる
何と云う有難いクレームであろうか。
これ程まで細かく指摘をしてくれる。
松井さん胸が熱くなると同時に
恥かしい気持で一杯になりました。
この暖かいクレームを励みにし
精一杯今日を頑張ろうと決意を固めたのです。
『有る事が難しい事が可能になってしまった
これを有難いと云う』
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