第103回
人財をつくる その8
58日前 見栄と外聞が人をダメにする
人はある局面に立つと
自分の力を出せない時があります。
その原因は心が気負いその反動で
行動が畏縮してしまうからです。
研修を受けている松井さんはその状態でした。
松井さん、若いスタッフと一緒に
店のカウンターに入った時の気持は不安でした。
自らが店長となって現場の指揮を取る。
だから全ての仕事に精通しなければならない。
しかし時間はない。
このプレッシャーが畏縮の原因になっていたのです。
最初に与えられた仕事は
洗い場に入って食器を洗浄することです。
若いアルバイトの人が
洗剤の種類や洗浄器の扱い方を教えてくれますが
松井さんは小さなノートに書くのがいそがしく、
実際に自らが行う場面にくると、
何が何だかわからず
ぼうっと立ちつくしているだけでした。
ノートなんかとろうとしたのが間違いだったのです。
頭で考えてしまう悪い松井さんがそこにありました。
あらゆる人材育成の本が出版されています。
P.F.ドラッカーの著書はその代表な物でありますし、
有名な著書の本が数多く出版されています。
しかしどんな有名な学者の著書よりも
人材育成については
元軍人であった山本五十六元帥の座右の銘
「云って聞かせて、自らやって見せて、
やらせて見せて、ほめてやらねば、人は動かじ」
につきるのです。
アルバイトの人は確かに松井さんに
云って聞かせるだけでした。
自らやって見せてはくれませんでした。
やらせて見せてもくれませんでした。
つまり、評価のしようもないのです。
松井さんはそこで、
「すみません。今一度やっていただけないでしょうか」
と云えば良かったのです。
それが云えないのは恥かしい、と云う見栄と外聞です。
何も出来ない、知らないから
1から白紙になって研修を受けに来たのです。
頭で考えるのではなく心で受け止める事が必要だったのです。
松井さんの様子を見かねて
店長の佐々木さんが声をかけました。
『見栄と外聞は劣等感があるからだ。
劣等感があるから人は成長出来る。
劣等感はバネである』
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