第6回
カフェビジネスって何なの その2
大手も創業は1人から始めた

ドトールコーヒーに入って3年、
経理係長をしていたある日、鳥羽社長が
「永嶋君、今ドトールが展開しているボランタリーチェーンの
『カフェ・コロラド』と云うコーヒー専門店が9店舗ある。
この展開の責任者をやって欲しい」
当時私の先輩で創業時からの経理のベテランの女性がいらして、
私は名ばかりの人間でした。
手術をして元気になった喫茶店の現場を知っている私は
このチェーンの担当にはぴったりと思っていたのだと思います。

私は快諾しました。しかし担当は私1人。
チェーン本部とは云えない陣容なのです。
やるべき事は山ほどあります。
サイフォンで抽出するコーヒーの抽出マニュアルの作成から
投下資本の標準化まで、
文字通り走りながらやらなければなりません。
その時思った事は「個人の経営」です。
飲食業でも小売業でも個店の個人経営者は
全て1人で経営をしているのです。
お金の工面から、商品の開発、仕入、人材の募集から教育、
税務対策まで1人で全てやっているのです。
そして必要な時に必要な知識や
技術を持つ人を登用して経営しています。
逆に個人経営だからこそ、全てを知る事が出来、
決断も早いのです。

私は企画室長になりました。
昭和48年当時のドトールコーヒーの社員は
20名に満たなかったからです。
朝は出店を希望する方の物件調査、
その近くの喫茶店で出店企画書の作成、
午後は既に開業している店のスーパーバイジング。
そして、午後6時から出店者への開業研修と
まさしくセブン・イレブンで「労働」しました。
社長の仕事は考え、導く仕事です。
私はその考え方を行動にして実践する役です。
働けばかならず結果が出ます。
良かったらそれを基準(スタンダード)にして
手順(マニュアル)にしていけば良いのです。
改良と改善はその場で出来ます。

トップが明確なヴィジョンを持ち、
そのヴィジョンの中核となるのは
その人の物の見方、考え方、行動の仕方です。
その核はロマンから生まれます。
このロマンとヴィジョンがあればこそ、
現場の仕事人間は戦略を立てることが出来ます。
その戦略があって始めて
今日闘う事が出来る戦術が編み出されるのです。


『発展する企業はトップにロマン、経営陣にヴィジョン、
部門、部署に戦略、個人に今日戦う戦術がある』


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