第102回
組織ケーエイ学37:ディレクターかぶり。

わが社は広告・デザインの制作会社なので、広告代理店の下で仕事をする機会が多い。ここでよくひっかかる問題があって、わが社の営業が伸びない原因になっているものがある。それがディレクターかぶりだ。

広告代理店はいずれも本質的には「営業の会社」であって、実際の制作業務は外注によることが多い。しかし代理店にも制作担当者がいて、ディレクターとして外注の制作会社をコントロールするたてまえになっている。
この代理店のディレクターのもとで、制作会社が手足となって仕事をするのが普通なのだが、わが社では、これまで何度か説明したように「考えるデザイン」を特長としており、実制作の前段階で勝負しているところがある。そのために、代理店のディレクターと「競合」を生じてしまう。

また企画とかアイディアとか、できるだけ前の段階でがんばるのは、仕上げの精度だけで勝負できる会社になっていないということでもある。こういう会社の性格が、代理店の制作担当者(ディレクター)との折り合いを難しくしている面がある。そんなわけで、代理店の営業部門から直に発注される場合に、わが社の長所がもっとも活かされるのだが、営直という関係は、不正の温床にもなりやすいのか、どこの代理店でも例外扱いされており、かなり制約がある。

決して「わが社は代理店の指図を受けない」とがんばっているわけではない。
代理店のディレクションでやろうと、わが社のイニシャチブでやろうと、それは本当はどちらでもいいのである。ただ、どちらのイニシャチブでやるのか、あらかじめハッキリさせておかないと、やり直しが多くなって、スタッフのやる気も下がるし、品質も下がる。

ディレクションかぶりで、とくに難しいのは、コンペの時だ。提案にかかるプレゼン料が十分にもらえない以上、なんとしても勝たなければならない。勝ち負けのポイントはいくつかあるが、ほとんどの場合、営業情報とディレクションがカギをにぎっている。
この点で何度も不本意な経験をしたため、現在では次のような方針に整理されてきている。つまり、「当社イニシャチブのときは当社も相応にリスク負担し、積極的に提案を引き受ける。代理店のディレクションによるときは、当社ではディレクターは関与しないが、結果についてリスクを負えないので、時間比例の作業料をプレゼン料として申し受ける」ことを原則とするようになった。


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