第60回
カネカネカネのケーエイ学9: 条件決定は自分から。

多くのビジネスマンにとって当たり前のことが、SOHOとして仕事を始めた人には、なかなか難しい。とくに広告とかデザインに関しては、感覚派が多いせいか、お金に関する問題を整理しないまま、仕事に入ることが多い。

わが社では、イラストレーションから仕事を始めたが、イラストレーターは広告デザインの業界でもっとも末端に位置する、弱い立場である。仕事の発注は来るのだが、いったいいくらなのかわからない、という場合がしばしばある。
はじめは、この業界はこういうものなのかと驚いていたが、すぐに放置できない問題だと気づいた。なりゆきに任せていたら、価格だけではなく、著作権の帰属などでも不利な状況に追い込まれてしまう。

このばあい、納品後に価格交渉していたのでは、納入した側が圧倒的に不利になるのは当然である。恋人に結婚の約束をしてもらうのに、タイミングとしていつがいいか、賢い娘さんなら知っているはずだ。

このような問題で何度も痛い目にあったので、値決めについては次のようなルールを決め、かなり意識的にやるようになった。
まず一回目の電話で、こちらから価格をオファーしない。予算の提示がない場合は「見積ります」と言って、いったん電話をおく。その後、こちらから見積りをファックスする。そして、このファックスに、著作権等の付帯条件を書いておく。

この方法では、不意をつかれて安易に値決めをしてしまうことを避け、自分でも金額の妥当性を客観的にみることができる。また見積りの付帯条件を書いておくことで、後から解決しようとすると難しい著作権などの問題を、いっぺんにクリアにできる。
この見積り書はフォーマットに従い、活字書体で印字されていることも重要だ。フォーマットと活字には不思議な力がある。こうして見積りを適切なタイミングで提出し、合意できたから仕事にとりかかった、というカタチをつくる。

わが社ではこの見積りフォームを、表計算ソフトではなく、データベースで作成し、経験を蓄積することにしている。このように条件の明確な見積りの記録があれば、契約書を交わさずとも、だいたいはオッケーだ。


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