第58回
組織ケーエイ学25: 目標はパタパタ。

自分の会社は自転車であり、こいでなきゃ倒れる。
これは仕方がないとしても、いつもいつも自分でこいでなきゃいけないのかというところが、キツイ。このコラムみたいに、たまには休みたいときもある。

病気をして入院を余儀なくされたことで、単なる不安とすまされない問題だと気づいた。1週間なら入院もできるが、1ヶ月にもなると会社がとまってしまう。
しかも自分の病気は基本的には治らないものとわかり、さらに、いつ本格的に悪くなっても不思議でない。そうなると、いままでと同じ仕事のやりかたはできないことは明白だ。深刻な状況になるまで、準備期間が与えられた、わけだ。

自分が1ヶ月くらい入院しても、回していける会社にしなければならないし、できることなら、自分がある日死んでも、社員たちでなんとかやっていける会社でありたい。
それまでは、職人として、個性と思いつきとがんばりによって、社会の中でなんとか、自分の居場所をつくることに精一杯であったわけだが、これからは会社のシステムをつくっていかなければならない。この時、ぼくは経営者になりたい、とはっきり自覚した。

本田宗一郎は、自転車に軽エンジンをとりつけたバイクの原型、通称パタパタでもって最初の発展をなしたそうである。このパタパタには、ペダルがついており、最初は自分でこがなくてはならないが、そのうちにエンジンがかかって走り始めるというものだったそうだ。
自分の会社も、パタパタのようなエンジンがほしい。そうすれば立ち上げの時ペダルを強くふめば、あとはハンドル操作でなんとか走っていける。ハンドル操作ならば、弱い体でもなんとかなるかもしれない。

デザインの制作は、基本的には職人仕事であって、人的要素が強い。つねに意識しておかなければならないことだが、われわれは毎年歳をとるし、感性もそれにつれて変容してしまう。いつまでも若い人を相手に、自分の感性をためしていることはできない。デザイン制作から次第に軸足を移していけるものを見つけなくてはならない。

わが社にとって、エンジンになるものとは何か?
この数年来、頭を離れないテーマであり、また、いろいろ試しては失敗している原因にもなっている。


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