第52回 東京では、エスカレーターに乗るときは左側に立ち、急ぐ人のために右側をあけておくことになっている。 なぜそうはっきり覚えているかといえば、27才のとき(つまり13年前)ソ連を旅行したのだが、このときモスクワの地下鉄で、二人連れの人もふくめて、人々が左側に立ち、右をあけているのを見て感心して、日記に書いたことがあるからだ。 むかし、おせっかいなアナウンサーがいて、全国民に「気くばり」をすすめていたことを覚えている。いまも一般に、マナーは、他人に対する気くばりや配慮、想像力、つまり心のありようであると信じられている。 エスカレーターの乗り方にもどれば、15年前の東京よりも現在の方が、人々の気くばりとか倫理観が向上したわけではない。ただ、その方が便利だ、ということを知ったにすぎない。 単に知識として扱えばよいものを、精神論とか倫理でもって語るのは、あまり合理的でない。というか、若い人には受け入れられないものだと思う。 ところで、このエスカレーターのマナーは、まだ北海道には普及していない。 |
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