第23回
ブランドケーエイ学9:軽薄な名前。

会社の名前というのは、ふつう、社員はどうすることもできない。
商品名にはこだわるが、会社名はなんとも商品と釣り合っていない
という事例をいくつか見かける。
まあ、社長マターなんだから仕方がない。

会社を立ち上げるときは、子どもを産むと同じで、名前をつける楽しみがある。
みなさんならば、どのように名付けるだろう?
空想してみるだけで楽しくなる。
ぼくの会社は、スイスイ社という。
なぜスイスイと名付けたかは、あとで述べる機会があるかも知れない。
ここでは名前についての考え方だけ、書いておきたい。
自分がかなり意識したのは、盛田会長が「ソニー」と名付けたこと。

もともとソニーは、「東通工」であった。
東芝はいまでも「東芝」であるが、ぜんぜんイメージが違う。
音を意味する「sonic」からの造語だが、オリジナリティがあって、
当時どこの辞書にもない言葉だった。
誰にでも読みやすく、また世界中で誤読されないことを
条件に考えていたそうだ。
当時、カタカナだけの社名はめずらしく、かなり軽薄なイメージがしたという。
「ソニーだけでは恥ずかしい。せめてソニー電子工業にしてくれ」
社員からはそんな反対もあったそうだが、
「いつまでも電子工業をやっているかどうかわからない」と決めたそうだ。

ソニーでさえ、当時は、人に笑われるような、軽い名前だった。
これにならって、自分も、シンプルで誰にでも覚えやすく、
オリジナリティがあるもの。そして最初は人に笑われてしまうような、
軽い名前をつけようと思った。
当時、マーケティングをやるということはあまり考えてなかったが、
さいわい、この社名がマーケティング的な発想と、
会社のユニークさをアピールしてくれる。

考えてみると、アップルとかヴァージンとか、好きな社名には、
共通してそういう要素がある。
スイスイという名前は、大好きだ。
もっとも実態は、アップアップ社なんだが。


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