第5回
組織ケーエイ学3: 鵜飼いビジネス。
はじめて「鵜飼い」という残酷な仕事を知ったときの印象を、
どう覚えているだろうか?
企業はあれと同じだ、と考える人がいる。
鵜飼いはたしかに、搾取そのもののように見える。
鵜飼いの企業観を、デザイン会社とデザイナーの関係にも
あてはめてみることができる。
つまり社長は、従業員にそれぞれ仕事を分け与え、
各自の売上げからそれぞれの給料を払い、
上澄みの利益をあつめて会社の利益にし、自分の報酬にする。
スタッフは給料以上の仕事をしているのに、もらえる給料はわずかだ。
それが面白くないから、デザイナーは力をつけたら、
みな独立するのが当たり前、自立できないやつだけ会社に残る、
という考え方だ。
つまり、逃げ出さないやつは弱虫なのだ。
ぼくは、こう考えない。
自分の人生が、鵜飼いの鵜でいいのか?
すくなくともわが社では、鵜飼いビジネスをやらない。
わが社では、会社というマジックをつかう。
たとえば、一人ひとりが10万円分の仕事をする。
それを5人が持ち寄ることにより、50万円ではなく、
100万円で売れる仕事にする。ここで50万円の付加価値を産む。
なぜ、足し算すると50万円にすぎないものが、全体で100万円になるのか?
それは、個々の能力を組み合わせることによって、
誰もが容易に到達しえないオリジナリティが生まれる、と信じるからだ。
これが会社のマジックであり、シナジー効果(相乗効果)である。
この効果を生むために、自分はあえて、
クセのある異能の人を集めるつもりだ。
平凡な能力を単純にあつめても、足し算以上の結果が期待できない。
同様の考えから、自分の会社では、原則として部品売りをしない方針だ。
資源を効率よく回すよりも、会社として付加価値を生むことを重視している。
鵜飼いビジネスに陥るくらいなら、明日にでも廃業した方がましだ。
するとこうも言える。
自分の仕事が「引き算」されていると感じるようになったら、
そろそろ独立すべき時期だ、ということじゃないか?
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