第55回 (旧暦2月25日)
ツクシだれの子、スギナの子
鎌倉ではツクシの盛期を迎えました。
ツクシはだれでも知っている
代表的な里の食草のひとつですが、
実は植物学上では「ツクシ」という名前の植物はありません。
それでは、ツクシは植物学で
どういう扱いをされているかというと、
スギナという植物の
「胞子茎」ということになっておるのですナ。
つまり、多くの草本植物では栄養器官である葉と、
生殖器官である花とが同一の茎につくのですが、
スギナの場合には栄養器官と生殖器官とが
別々の茎にわかれており、
その生殖器官である胞子茎のことを
一般に「ツクシ」と呼んでいるわけです。
仙人が子供のころには、春になるとどの家でもツクシを摘んで、
卵とじや油炒めなどにして食べたものですが、
宅地化などでツクシが生えるような野原が
姿を消してしまったのに加え、
ハカマを取り除く手間が掛かることを嫌ってか、
近年ではこれを食べる習慣が
めっきり見られなくなってしまいました。
しかし、ツクシは一年に一度
春先のほんの短い期間にしか口にできない貴重な味覚ですから、
やはり毎年一度は味わってみようじゃありませんか。
卵とじや油炒め以外にも、ツクシご飯や和え物、
テンプラなどで楽しめますし、
ピザの具にしてもなかなかオツなものですゼ。
ところで、この胞子茎のツクシに対し、
栄養茎のスギナのほうは、
エキセトニンや各種のフラボノイド、ケイ酸などを含み、
漢方ではこれを乾燥させたものを「問荊(もんけい)」と呼んで
腎臓病や利尿の薬とされています。
また、糖尿病に門荊を煎じてお茶代わりに飲んだり、
ウルシかぶれや神経痛、リウマチ、腰痛、関節痛などに
生のスギナをすりつぶして患部に貼る、
などの民間療法があるほか、
生のスギナをホワイトリカーに漬けたスギナ酒
(分量は酒と同量、糖類は不要)は、
吹出物やニキビなどに外用するときれいに治りますし、
美肌作りにも効果がありますゾ。
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ツクシとスギナ |
ツクシ摘み |
早春の里の野草のテンプラ 上段右がスギナ 中央がツクシ
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