旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第193回
不安だから株をやるという「日本基準」

最近の雑誌を眺めていると、
株式投資の話題が多いですね。
「初心者でも分かる株式投資のイロハ」とか、
「得する銘柄教えます」とか。
観光客に裸足でみやげ物を売り歩く子供たちのいる国、
戦争で財産云々と言っている場合ではない国。
そんな国と比べれば日本は平和で安定しているのだから、
不安になることはない。
そんな極論を言うつもりはありませんが、
多くの人がなんとなく先行き不透明な感覚を
持っていることの現れなのでしょう。
経済の見通しは明るいとは言えず、
年金制度もほとんど崩壊状態。
しかし、銀行の金利は安く、預金しているだけではお金は増えない。
それなら、投資をして利益を得ようではないか。
大方、そんなロジックでしょうか。

ですが、株式投資は一部の人たちがやるものだというのが、
世界標準の考えだと私は思います。
日本は世界でも稀にみる裕福な国だから、
たくさんの人が株をやるのは必然だ。
そういう考えもあるでしょう。
アメリカではもっと盛んではないか。
そんな意見も確かにあります。
最近の日本はアメリカの真似ばかりしている感じですが、
アメリカでも株式投資ができるのは
実際には一部の裕福層だけではないでしょうか。
一時期のバブル経済を反省する声も
多くなっていると聞きます。
アメリカも中国も、大国は人を十把一絡げで操るわけですから、
似たようなものではないでしょうか。
あまり踊らされないようにした方がいい。
もちろんお金が余っていて、
リスクを背負える人は問題ありません。
ストックオプションも話が違います。
あるいは年配の方で社会貢献の意味で投資をする。
そういうのも真っ当な気がします。

ですが、30歳台とか40歳台で、
将来年金がもらえるか不安だから、
会社をクビになったときのために、
そういう動機で株式投資をするのは、
あまりにも悲しすぎる気がします。
たとえば、これからサラリーマンを続けても
大して給料も上がらないなら、
思い切って昔やりたかった仕事を始める手もある。
それでも収入はあまり変わらない。
そうした見通しがあるなら、迷う必要はないですよね。
「給料を上げろ」と文句を言い続けるのと、
やりたい仕事をして「まあこんなものか」と納得するのと。
どっちの生き方がいいか。
ひょっとすると、今はチャンスかもしれない。
もちろん、同じサラリーマンでも、
希望する仕事をさせてくれる会社に移る手もある。
転職するなら、合間の時期に思い切って
長期の旅行に出かけて、命の洗濯でもしますか?

記者やジャーナリストは、特定の企業について、
一般の人たちが得られない情報をもっているから、
株式投資はしない方がいいというのが、
私の周囲に多くある意見です。
影響力も多少なりともあるでしょう。
書きたいことが書けなくなるのもある。
自分が買った株の話題を記事にして褒めたたえる。
そういう行動はジャーナリストの恥でしょう。
私もそう思います。
株ができる人に多少の羨みもあるのかもしれません。
私には投資するような余裕もありませんが(笑)。


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