旅行記者・緒方信一郎さんの
読んでトクする旅の話

第76回
関西空港がオープンした頃・・・

ノースウエスト航空が10月から関空−ホノルル線を運休します。
ハワイ線といえば観光路線の要といえる路線です。
これで関空からの旅行者はまたひとつ貴重な路線を失うことになる。
ノースウエスト航空の関空線は、アメリカのデトロイト線と
台北線だけとなりますが、同社は日本人にも人気の
マイレージサービス、「ワールドパークス」を実施しています。
このマイレージを貯めている人は、加算の機会が減ることにもなる。

関西空港は1994年の開港当初、日本初のハブ空港になるか、
と期待されました。ハブ空港とは、国内線と国際線が豊富にある、
乗り継ぎの拠点空港として規模の大きな空港を意味します。
ニューヨークのJFK空港やロンドンのヒースロー空港など、
海外にはハブ空港と呼ぶにふさわしい空港がいくつもあります。
日本で最も国際線が多いのは成田空港ですが、
当時は国内線がほとんどないことからハブ空港とは言えなかった。
そんな中でオープンした関空は、
日本初のハブ空港になるのではないか、と期待されたわけです。

しかし、業界関係者はもっと厳しい見方をしていました。
当時、私はある旅行雑誌で連載を持っていました。
その記事のインタビューの際に、日本の大手航空会社に、
「関空はハブ空港になりますか」と聞いてみました。彼の返事は、
「関空はアジア路線中心の空港と考えている」というものでした。
世界各地に国際線を運航しているのがハブ空港ですから、
そんなスケールの大きい空港にはならないと、
その人は考えていたわけです。
あれから10年、関空はそのイメージに近い空港になっています。

ですが、当時、その発言内容をそのまま記事にしようとしたところ、
思いきり圧力がかかりました。要するに、
「関空は将来有望なハブ空港として期待する」
という趣旨の内容に変えろというわけです。
それはそうでしょう。国を挙げて関空を盛り上げようと
していたわけですから、日本の大手航空会社が、
「関空はアジアに特化した空港」などと発言したと分かったら、
当局から大目玉を食らうことになる。
しかし、航空会社は営利企業です。政府が描いていた甘い見通しに、
素直に賛同できなかったのは当然のことだったのです。


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