第1965回
二宮金次郎は「お金」を背負っている?
僕の親友である作家の猪瀬直樹さんを、
ちょっと別件の用事もあって、
東京都庁の巨大ビルの6階にある副知事室を初めて訪問し、
「なぜ、作家が副知事になったのか?」
という疑問について聞いてみた――
官僚主義にすべて下駄を預けておいて、「日本は滅びるよ」と、
人生を斜めに構えて高見の見物を決め込む、
夏目漱石に代表される態度は、これからも「いかん!」というのが
猪瀬さんの考え方のようでした――、
では、作家的直感、つまり猪瀬さんのいう
「弁証法的感性」によるビジョンを
政治、つまり都政に活かす、方法とは何か?
著書「二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?―」を上げて、
「週刊 読書人」※1 2007年9月21日号の
第1面、そして第2面、第3面を飾ったインタビュー大特集、
「東京都副都知事になった作家の抱負」に
詳しく語られているので、
前回に続いて、その続きを抜粋しましょう
具体的施策の方向性を明らかにしています。
「二宮金次郎も米相場(注・先物取引)をやっているわけです。
お米が最大の金融商品ですから。(略)
お米をただ生産するだけでなくて、
どの場所で売るかによって
価格が変動していることを一番敏感に感じながら
生きて行くわけですよ。
江戸時代を近代の出発点という、
類い稀れな時代だと見ていかなくてはいけない。
それと同時に今の時代と重ね合わせて見る必要がある。
例えば、高度成長が終わった後に、
どういう構造改革が必要だったかを見つめて行くのに、
二宮金次郎の役割とは何だったかを考えていく必要がある。
あの薪(まき)は何故背負っているのか。
あれは親孝行で背負っているわけじゃないんです。
いまのサラリーマンの家計に占める光熱費の割合は
6パーセントくらいですけど、
武士の家計に占める江戸時代の光熱費の割合は
15パーセントくらいと高い。
薪というのは重要な換金商品ですから、
二宮金次郎は少年時代に
最も金目のものを背負って売っていくことから始めるわけです。
金目のものを売って換金して投資する。
そういう中から金融について彼は知識を得たり、
技術を磨いていって、
二宮金次郎ファンドのようなものを作る。
江戸時代の農村は中小企業で(略)
つなぎ資金を提供させていくことで再生させる。
だから産業再生機構みたいなことを彼はやるんです。」(以下略)
どうです? 作家・猪瀬さんの副知事挑戦の発想法は
なかなか「弁証法的直感」に溢れていて
面白いと思いませんか?
テレビや新聞を開くと
「日本は滅びる、滅びる」という話ばかりが流れ、
いい加減なコメンテーターがおしゃべりをしてお茶を濁す――、
まさに「低劣遊民」まがいの輩が跋扈する
嫌な時代とはなっていますが、
猪瀬さんの話を聞き、その行動をつぶさに見て居ると、
なにやら、聞いている人、読んでいる人、
実業に邁進している人に、
やる気のエネルギーをもたらすというか、
ときめきの躍動感を模様させると思いませんか?
「週刊読書人」のインタービューはまだまだ続くのですが、
興味のある人は、新聞のバックナンバーを頼むか、
猪瀬さんの近著「作家の誕生
(朝日新書) 」
「空気と戦争
(文春新書)」
「二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?―」
を読んで見てください。
また、猪瀬さんのホームページ※2や
「眼からウロコ」というblog※3でも、
副知事日記が読めますから、
こちらを覗いて見るとよいと思います。
※1 http://www.dokushojin.co.jp/70921.html
※2 http://www.inose.gr.jp/index.html
※3 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/inose/
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