第1793回
「久病良筆」(2)
長患いをしたライターが編集した医療本は、
含蓄があって面白い、まさに「久病良医」ならぬ
「久病良筆」だ――という話の続きです。
先ごろ、優秀なライターの樋口さんもは、
「ガン・アトピー・難病の治療には
西洋・東洋・心身医学の統合療法」
(松山家昌・著 飛鳥新社)という医療本を構成したのですが、
では、ご本人はどんな難病克服を体験したのか?
すでに読んだ人もいるでしょうが、
まだ読んでいない方のために、
「特集・体にいいことしてますか?
わが疾走記/名馬ディープインパクトと
どちらが長生きできるやら?」という
樋口さんの糖尿病克服のエッセイの続きを紹介しておきましょう。
*
約2カ月の長い入院生活でなんとしても辛かったのは、
馬券が買えなかったこと。
当時、私と競馬の付き合いは30年くらいでした。
職業は競馬記者だったり、
世界中から美人を集めて女性騎手だけの競馬をプロモートしたり、
夕刊紙のレース部で競馬面を担当したり、
競馬世界の内寄りで仕事をしていたので、
競馬場通いはほぼ毎週、欠かしませんでした。
当時、私と競馬の付き合いは30年くらいでした。
職業は競馬記者だったり、
世界中から美人を集めて女性騎手だけの競馬をプロモートしたり、
夕刊紙のレース部で競馬面を担当したり、
競馬世界の内寄りで仕事をしていたので、
競馬場通いはほぼ毎週、欠かしませんでした。
ちょっと馬券の講釈をさせてもらいますが、
予想は前日にでもできるのですが、
馬券を買うときはレース当日にパドックで
馬の状態を観察してからというのが、私の固い信念です。
商品を通信販売で購入するのと、
店頭で買うほどの違いがあるといえば
おわかりいただけるでしょうか。
現場ではだれも買わないような
お買い得品(馬)を発見することだって可能なのです。
同じようなカタログ(競馬新聞)を判断材料とするかぎりは、
よほどの変人でもないかぎりは人気馬を買いたくなるわけですが、
株式投資と違って競馬は
人気のない馬(銘柄)をみつけるギャンブルです。
しかし、さすがに、その年の競馬は断念せざるを得ませんでした。
退院後も点滴治療で衰弱した体力は簡単には回復しませんでした。
医師に食事療法と適度な運動を申しつかって、
ほどほどに指示を守っていたので血糖値は改善されまして、
その後、競馬雑誌の編集の仕事に就きました。
もちろん競馬場通いも再開です。
ところが、ある日、東京競馬場の帰途の坂道で
脹脛が痛んで通常の速度で歩けなくなったのです。
糖尿病との連鎖ではないかと思ったのですが、
血糖値は正常で、飯田橋のK病院はじめとして転々としましたが、
原因、病名は不明でした。
近所のT医大付属病院の内科に2年通ったのですが、
まったく改善されず、挙句に、この医者はわが白髪を眺めながら、
「お歳なんだから…」とのたまう始末です。
「えっ!?」 58歳のころでした。
死は怖くないけれど苦しみながら生きるのは嫌なものです。
おまけに懲りない話ですが、
競馬場を断念するのも苦痛です。
*
樋口さんの糖尿病克服記が面白いのは
ただ医療の話だけでなく、趣味の競馬はもちろん、
人生そのものの悲喜劇に話が広がっていき、
読み応えがたっぷりあるからだと思いませんか?
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