元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1726回
患者の寂しさがわかる人

少しでも多くの患者さんの悩みに答える
ガン専門相談所=「キャンサーフリートピア」が、
東京・麹町から銀座に移り、隣には「銀座並木通りクリニック」
という病院も開設された・・・という話をまえに書きました。
先日、診療所の開所祝いにたずねたのですが、
相談と診察が続けて受けられるようになったこと、
地下鉄から直接入れるビルにあるのでとても便利になったこと、
そして、患者の気分をゆったりとさせるレイアウトで、
抗がん剤の休眠療法を受ける個室にも
大きなリクライニング・チェアが7基ほど用意されていました。

ちなみに、患者と医師の大きなギャップを埋めて、
自分に納得できる、
可能性の高い治療を組合させいきましょう・・・
と、治療設計の相談相手になっているのが、
キャンサーフリートピアの代表医師・三好立さんです。
三好先生のモットーは「よりよい時間をより長く生きる」ための
人生設計をしましょうという、とてもスローヘルスな考え方です。
「銀座並木通りクリニック」での治療とは、
抗がん剤少量投与の休眠化学療法や、
自家がんワクチン療法、さらに漢方やサプリメントも加えた
いわば、体にやさしい治療ですが、
詳しく知りたい人は、HP1で確かめてください。

ところで、一口に言って、
心やさしくて志も技量も高い医師を探そうといっても
いまの3時間並、3分間治療の医療制度の中では至難の業です。
まえに、このコラムで紹介した、
「患者漂流―もうあなたは病気になれない」
という新刊新書でも指摘されるように、
「貧乏人は病院にかかれない」
「地方の人は病院にかかれない」
「高齢者やリハビリ患者は長期入院ができない」
この少子高齢化、さらに医療費財政の悪化による
医療制度改革で長期の入院や治療が打ち切られる――、
医療過誤、院内感染は蔓延する――、
こうした「患者漂流」化現象の中で、
ますます、安心できる主治医を探すことが難しくなってきました。
患者の心魂をいたわってくれる医師が少なくなるどころか、
看護士からも薬を調合してくれる薬剤師からも、
人間の温かみがどんどん失われていく、
まさに「患者漂流」の時代に
突入していくといっていいでしょう。
こうした無機質的な医療制度は、
この100年の間に作られてきたわけですが、
そのころを描く小説などを読み返していると、
数十年前までの日本は
人間味溢れる社会だったのだなあと思い知らされます。

ところで、ガン爺さんの昔語り
といわれてしまえばそれまでですが、
医師ではなく、まだ多少は残っていますが、薬売りにしても、
富山の売薬行商のような人たちが、家庭の軒先を訪ねて、
健康相談や処世の話をしていった時代がありました。
映画の寅さんの香具師(やし)稼業ではありませんが、
いまからしてみれば、いかがわしい商売もあったのでしょうが、
じつに「患者の寂しさがわかる」人たちがいて
「医薬は仁術である」といったことが、
素直に、巷に溢れていたことになります。

富山の薬売りといえば、前に、
「心がシャキッとする『言葉』の置きぐすり」
(寺田スガキ・著 東邦出版 )
という本を紹介したことがあります。
昔、置き薬屋さんが毎年1枚、
家庭に置いていく標語を集めたもので、
どこかで聞いたような言葉もあって結構ためになります。
昔の薬屋さんって、ただ風邪や腹痛の薬を売るだけでなく、
お客さんを元気にする心魂のエネルギー源も置いていったことが、
この本を読むとよく伝わってきます。
「高いつもりで低いのが教養」 
「低いつもりで高いのが気位」・・・ 
「日常の戒め10訓」と題して半紙にしたためたものですが、
日ごろ忘れがちな、ちょっとした人生訓を
薬やお土産のおもちゃなどと一緒に
置いていかれたというわけです。
「患者の寂しさがわかる」人たちが、
診断したり、薬を売ったり・・・
そうした人情味の溢れる医療社会を期待することは
もう無理なのでしょうかね。


1 http://www.cftopia.com/shoukai/index.html


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2007年5月19日(土)

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