第1666回
「せっかちな私をお許し下され」
闘病の中で明るい希望が見えて、トキメイてくると
よく「春を迎えた」ようだと表現しますが、
まさに、ガンの闘病もその通り――、
「越冬迎春」、いかに「上手に冬を越えて春を迎える」か、
からだの冷えを避けて心身を温かくバランスよく保つか?
「風邪を引かないようにからだを温めよう」
この誰にでもわかる考え方こそ、ガン延命法の基本だ――、
という話の続きです。
心身の冷えが、ガンの患者にとってはもっとも怖い大敵なのです。
この冬は、地球温暖化の影響でしょうか、
例年より温度が高く、比較的楽に過ごせたように思いますが、
温度の寒暖の差が大きいときが油断大敵なのです。
昼間、温かいからといって薄着をしていると、
そのまま夜、外出して、からだを冷やして風邪を引き、
免疫力を失うと、ガンはここを狙って増殖を始めます。
「越冬迎春」、いかに「上手に冬を越えて春を迎える」――、
ことの大切さを、身を持って知ったわけですが、
人間って記憶がいいようで忘れっぽいものです。
僕も何度も、失敗して風邪をひいては、
「スワッ! ガン再発か?」と慌てふためくことがありました。
幸いにも帯津良一医師の処方漢方薬や、
王振国医師の天仙液・大量服用などで、
急場を凌げたのは幸運でした。
おかげさまでガン病棟を逃げ出してから、
9回目の桜の季節を迎えましたが、
厳寒の冬を過ぎて、櫻の季節になると
「やれやれ、風邪も引かずに、この冬もうまく乗り切った」と
ほっと胸をなでおろすものです。
僕は意気地がないといいますか、
せっかく、この世に生を受けたのだから、
もっと、人間らしい温かみのある治療法があっていいはずだと、
信じて、この9年を生き延びてきたわけです。
主治医の“脅迫”を振り切って、
ガン病棟を“脱走”したこともありますし、
化学抗ガン剤こそ、エビデンス(立証性)の高い万能薬だとする
医師たちに「寛解率20%しかない劇薬」なのだから、
免疫力を高める代替療法との補完・統合を考えたらどうだ!と、
ホリスティック医療の必要性について
激しく論議したこともあります。
新しい抗ガン剤を捜し求めることも必要でしょうが、
「からだを冷やさない、風邪を引かない、心身を温める」・・・
なにはともあれ、この養生三原則を忘れないように、
元気で長生きを続けてください。
僕たちの仲間とも、こうしたことを肝に銘じて支えあい、
病院での抗ガン剤治療法のほかに、
食事や呼吸法などの養生法を組み合わせて、
長生きを目指しているわけですが、
残念にも、昨年暮、何人かの再発患者さんが、
風邪や症状をこじらせて永眠されました。
同じ悩みを抱いて歩んできた仲間の死は、
言葉に表せないほどの激しいショックで、
しばらく呆然としたものです。
心より冥福を祈りつつ、この人たちと育んできた思い出を共にし、
残してくれた貴重な体験やパワーを引き継いでいくこと、
そして、次の患者さんたちに伝えていくことも、
僕たちの使命だと思いつつ、いつも心の世界で語らっております。
このコラムや「いのちの手帖」にも登場していただいた、
阿部満子さん、久禮文博さん、小澤恵子さん・・・。
あの生前の明るい笑顔を思い浮かべつつ、
改めてご冥福をお祈りいたします。合掌。
久禮文博さんからは、
以下のような最期のメールをいただいたことを思い出します。
「一足先に宇宙旅行へと出発する、
せっかちな私をどうかお許し下され、
謝、謝です。そしていずれにしても、また会いましょうぞ!」
いつも快活な久禮さんらしい言葉を残して、
安らかに「宇宙の旅」へ立たれたわけです。
みんないい人でした。
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