| 第1538回食育とは「欧米借り物」思想にあらず
 新宿・明治安田生命ホールで開かれた「海の精」株式会社の30周年記念講演会から
 僕が感じた話の続きです。
 「食育基本法」の矛盾についていろいろ書いてきましたが、
 この「食育」という語源はどこから来たか?
 
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』で検索すると、
 以下のように書いてあります。
 「なお、食育という言葉は、明治時代に
 西洋医学・栄養学否定運動を展開した陸軍漢方医、石塚左玄が
 『通俗食物養生法』(1898年(明治31年)
 「今日、學童を持つ人は、
 體育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき」)で造語した。
 数年後の1903年(明治36年)に
 小説家・村井弦斎も『食道楽』
 (「小児にはコ育よりも、智育よりも、躰育よりも、
 食育が先き。躰育、コ育の根元も食育にある。」)で使用したが、
 この2人以外による明治〜昭和初期の使用例は、
 未だ発見されていない」
 
 さて、明治初期の陸軍漢方医・石塚左玄とは、
 西洋医学の医者が治せないような病気を
 食べ物を変えることによって治した医者です。
 わが国の食養医学の礎を築いた人で、
 食養生の祖、
 マクロビオティック玄米菜食法の始祖といわれる人です。
 『通俗食物養生法』は、明治から大正にかけて版を重ねた
 大衆向け食養解説書で、
 蛋白質、脂肪、糖質のカロリー栄養学理論に対し
 ナトリウム、カリウムという「二大ミネラル」で
 食物と体について研究した理論を残しています。
 
 (1)食本主義-=人間のからだは食物が作る。
 したがって食物で病気は治せる
 (2)穀食主義=人は歯の形から考えて、
 主として穀物を食べるべきだ
 (3)身土不二(しんどふじ)=住んでいる土地で
 採れたものを食べる、
 あるいはその季節に出来たものを食べるという原則
 (4)一物全体食(いちぶつぜんたいしょく)
 =食物は丸ごと食べましょうという理論
 (5)三白追放=白砂糖、白米、白パンなど精米あるいは
 精製した白い食品は体には良くない・・・
 こうした原則を「食養生」「食育」のもとしたのですが、より具体的な理論が陰陽調和論=
 「ナトリウムとカリウムの調和論」です。
 ●ナトリウム(Na)とは
 食塩や、肉・卵・牛乳・魚貝などの動物性食品、
 ●カリウム(K)とは
 穀物・野菜・果物・海草などの植物性食品のこと。
 「この摂取のバランスが心身の状態に大きく影響する」
 としたわけです。
 
 つまり、人体の細胞の外側には
 陽性でしめる性質のナトリウムが多く、
 内側には陰性でゆるめる性質のカリウムが多い。
 その割合が、ナトリウム1対カリウム5程度のバランスで
 保っている人が健康であること、
 さらにそのバランスを持っている
 最も人体に適している食物が玄米だ――、
 と発見したわけです。
 
 日本人であれば、これくらいの語原や由来を知ってから、
 健康と食事、いのちと食事、
 日本人らしい豊かな生活、さらに「食育」・・・
 ということを考えるべきだと思います.
 なぜならば、マクロビオティック玄米菜食法も然りですが、
 浅薄な「欧米の借り物」の栄養思想ではなく、
 日本人が、日本人の体質と風土をしっかりと観察した上で
 考え出した「いのちのキーワード」だからです。
 もちろん、玄米がよいといっても、
 いまは化学カリウム肥料まみれものが席巻していますから、
 有機農法のおコメをどう作るか? どう入手するか?
 とくに幼児にどう食べさせるか?
 こうした「食育」の緊急課題が、
 役所では避けられていることが、とても問題だと思います。
 |