元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1274回
「多重ガンを克服して」

3月1日創刊の「いのちの手帖」の書評欄=
《本の愉しみ/ブックス フォア スローヘルス》でとりあげた、
おすすめの「患者学的治療学の本」=
「いのち本」の7冊のうち、
「抗ガン剤治療のすべてがわかる本」
(矢沢サイエンスオフィス・編 学習研究社)
について紹介してきましたが、
次は、最近、発刊された「多重がんを克服して」
(黒川宣之・著 週刊金曜日)の話です。

著者は、ガン闘病歴10年――、
それも、前立腺、大腸、胃と多重ガンを克服してきた、
先輩ジャーナリストで、
前「週刊金曜日」の社長・黒川宣之さん。
自らの雑誌に体験記を連載していたころにも、
このコラムで紹介したことがありましたが、
「僕の闘病記は“体験的治療学”として考えています」と
じつに執筆の姿勢について、
明快に述べていたことを思い出します。

というわけで、しなやかな患者学、
ゆったり健康学を目標とする
スローヘルス研究会・編集の雑誌
「いのちの手帖」の書評には、
医師のガン治療本に偏ることなく、
なんとしても、編集の姿勢が
「患者が主体であるかどうか?」――、
そうした患者学的治療学をモノサシにして、
「患者のためのいのち本」を
選んでみよう、推奨しようと、考えたわけです。

さて、黒川さんの新刊を改めて、
まとめて読ませていただきましたが、
ただ「いのちを張った」闘病記というだけでなく、
その10年間の体験から、
治療現場の問題が次々と洗い出され、
さすが、黒川さんらしい鋭い視点です。
ガン治療後進国への警鐘と提案が
きちんと構成されているところが秀作です。

多くの患者や家族の「手引き」となるだけでなく、
「患者学的治療学」として評価される集大成ですから、
患者さんや患者の方だけでなく医療関係者、
さらにガン記事やガン番組を作る
ジャーナリスト、編集者、
TVディレクター、キャスターも必読です。

これまでの「ガン即=不治の悲劇病」
「お涙頂戴の人生ドラマ」「医師は神様」といった固定観念、
さらに「手術療法、化学療法こそ至上の科学治療」
という妄信主義から脱し、
この長寿時代を納得して生きるにはどうすべきか?
これからの「いのちの医学」を見直す契機として、
こうした「患者学的治療学」本の等身大の報告書を
勉強してほしいと思います。

医大、病院、教授、
そして監督官庁からの発表資料を
鵜呑みにして書き写しているだけのガン記事は、
もはや300万人といわれるガン体験患者には、
参考にならない事態になってきているからです。

たとえば、喫煙の害について
黒川さんは以下のように、きっぱりと指弾しています。
「確実にいえることは、喫煙の害(略)、
 ところが、肺がんをはじめ大半のがんに関与し、
 禁煙をすれば発病を大幅に遅らせることがわかっている
 主犯のたばこ対策について、
 政府の腰は理解しがたいほど重い」と。


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2006年2月21日(火)

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