第1272回
最新抗ガン剤がわかる本
3月1日創刊の「いのちの手帖」の書評欄=
《本の愉しみ/ブックス フォア スローヘルス》でとりあげた、
おすすめの「患者学的治療学の本」=
「いのち本」の7冊の話の続きです。
帯津良一医師、安岡章太郎さん、藤野邦夫さんの著書、
そして拙著については、
まえに、このコラムでも紹介しましたので、
「抗ガン剤治療のすべてがわかる本」
(矢沢サイエンスオフィス・編 学習研究社)
「多重がんを克服して」
(黒川宣之・著 週刊金曜日)――、
この2冊についてお話したいと思います。
まずは、「抗ガン剤治療のすべてがわかる本」ですが、
この本は、380ページのかなり厚い本ですが、
とくに、難しい化学療法=抗ガン剤の治療内容のデータが
平易に書かれているので、
はじめての患者さんやご家族には、必携の家庭医学書です。
とくに、「抗ガン剤治療のあらゆる疑問に回答」という100頁と、
100以上の最新抗ガン剤・全情報リストが、役に立ちます。
この本を送ってきてくれたのは、
学習研究社の岡部学さんという編集長ですが、
この人、いまは亡き、土屋繁裕医師が書き下ろした、
「よりよい治療を受けるための肺ガン ハンドブック」
の担当者でもあり、
その縁で、この本を手にする機会が出来たわけです。
さて、このガン家庭医学書シリーズは、
「ガンのすべてがわかる本―ガン全種類別・最新治療法」
「胃ガンのすべてがわかる本」などが、すでに出版されていて、
患者が知りたい疑問について平易に解説することで定評です。
ちなみに、抗ガン剤読本というと、
ともすれば、米国直輸入の化学薬賛美本や
抗ガン剤妄信主義の本が多いものですが、
100種類以上のガン部位別の
抗ガン剤・全情報リストを網羅して、
さらに
「強い副作用は? 副作用を抑えるには?
なぜ髪が抜ける? 効くガンと効きにくいガン?
費用は?・・・ 」
患者が抱える疑問と不安に
詳しく答える100ページのQ&Aが特徴でしょう。
具体的な治療の知識が欲しいとき、
治療の不安に襲われたとき、
抗ガン剤治療を受ける前に
手にする患者読本として最適だろうと思います。
僕自身は、入院中に、さんざっぱら、
抗ガン剤の副作用による、
嘔吐、吐き気、下痢、倦怠感に悩まされてきましたので、
もろ手をあげて、抗ガン剤は「魔法の弾丸だ」
などとは推奨できませんが、
いまや、手術や放射線治療との併用、
さらに再発、転移の状態では、
否が応でも、大病院で化学療法=抗ガン剤が使われますから、
僕のように抗ガン剤恐怖症、または拒否症の人でも、
ただ「食わず嫌い」する姿勢はいけません。
たとえば、この本に出てくる、
米国の腫瘍学部教授のインタビューなどを読むと、
ホリスティック医学を否定する部分は納得がいきませんが、
抗ガン剤の「効」だけでなく「罪」についても
冷静に述べているところは秀逸です。
ともあれ、わが身に受けるガン治療の正体を知らずして、
「いのちを張る」くらい、愚かなことはありません。
「敵」?の正体くらいは、十分に知ったうえで、
わが身の次善の策を講じる=
いのちの治療設計を組み立てることが、
これからの「賢い患者学」だと、僕は思っていますので、
あえて、スローヘルスの雑誌「いのちの手帖」の
おすすめ本の一冊に、
この「抗ガン剤読本」を取り上げたわけです。
|