第1262回
作家・山口泉の「ホリスティック介護」論
11月23日(水)、東京・目黒で開かれた
「介護をもっと、ホリスティックに」という、
帯津良一医師と僕の講演会の話を書いたことがあります。
とくにガンだけでなく、認知症や老齢者医療など、
より広範囲な介護について
病院はもちろん、在宅や地域で、
よりホリスティックな環境を作れないか?
そうした提案をするセミナーで、
主催したのは「NPOオーロラ自由会議」、
「ホリスティック介護研究会」をやっておられる
遠藤京子さんと作家の山口泉さんで、
「医療だけでなく、介護においても、
一人ひとりの被介護者の全体性を考えたい」
というのが主旨でした。
その山口泉さんが
信濃毎日新聞の夕刊に連載しているコラム=
「同時代への手紙」に、
このセミナーの模様と、
「ホリスティック医療の見直し」について
論評する8段組の論文が、
1月20日付けで掲載されましたので、
一部を、みなさんにも紹介したいと思います。
ホリスティックな治療とは、
このコラムを読んでいる方ならお分かりの通り、
人間を機械のように修理するのではなく、
からだ、こころ、いのちの
人間丸ごとを見る統合的な医療です。
身体性のみならず精神性も霊性も加味して
治療設計していこうとする医学です。
ところが、この100年、日本の医療は、
ドイツ型の臓器分断式の近代医学を金科玉条として
制度も法律も作られてきましたから、
大学病院のみならず、多くの医師たちが
エビデンス(証明性)が乏しい、
心で治療するとはいかがわしい・・・
と積極的には取り上げません。
さらに、それに追従するマスコミは、漢方や気功、
はたまたホメオパシーといった代替療法、さらに
西洋医学との統合を図るホリスティック医学については
タブー視する傾向となりました。
とうとう、医師も病院もメディアも頼りにできないことになり、
多くのガン患者と家族がインターネットなどを通じて
コツコツと情報を収集しながら、
自らが意を決して
「ホリスティックな医療設計」の組み立てを図る――、
なんともミスマッチな「いのちの時代」となってきたわけです。
ですから、山口泉さんのように
「同時代」テーマとして、
ホリスティック医学を堂々と取り上げるジャーナリストは
数少なく、とても貴重になってきたわけです。
今回のテーマは
【人間”全体“を捉える「医療・介護」「選ぶ主体」】
と題するものですが、
帯津博士が提唱する「ホリスティック医学」にこそ、
「西洋医学」&「近代合理主義」の限界を
乗り越えるカギを秘められている――として、
ホリスティック医学の元になった
「ホーリズム(全体論)思考」の起源から説き起こしています。
「もともとギリシャ語の「ホロス(全体)」に由来する
『ホーリズム』の思考は、今世紀前半、
南アフリカ出身の軍人・政治家・哲学者である
ジャン・クリスチャン・スマッツにより提唱されたという。
スマッツ自身の政治的経歴は必ずしも単純ではないようだが、
いずれにせよ、“近代合理主義”の限界に対する
異議として出てきた思想であるといえるだろう」
「ホリスティック医学」(全体のつながり)という考え方を、
単なる西洋医学対東洋医学の“学閥論争”としてではなく、
パラダイム(枠組み)思考の変遷から説き起こし、
いのちの全体性、個人の主体性にまでテーマを高めているところが、
山口泉さんという稀有な作家を、
僕が評価している所以でもあるわけです。
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