元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1038回
「自費出版」の落とし穴

定年退職者や、
ちょっと文章が書ける主婦たちの「生きがい」を
ターゲットにした
「自費出版」「個人出版」が繁盛している――、
という話の続きです

「宣伝仕掛人」という本を出版した前さんの場合は、
いまだに宣伝業界で活躍していることもあって、
出版社も好意的な条件で
個人出版を受けてくれたそうです。

ただ、文章が書ける、書きたいという
まったくの素人だと、
いろいろオプション・フィーが増えて、
出版社によっては、
料金をボラれることになりますから、
よく調べてから「出版社を選ぶように」というのが、
前さんからの忠告です。

ちなみに、現実の裏事情は大変なようです。
1997年以降、出版界の販売額の対前年伸び率が
マイナスに転じ、7億点といわれる書籍販売部数は
この内およそ4割弱が返品されているのが現状ですから、
大手出版社も乗り出し、
その出版総点数が
ナンバーワンといわれた
大手出版社の出版点数を抜いたといわれます。

出版社も儲からなければ困りますから、
この分野には乗り気のようです。
かりに、300万円で
100人が出版すれば3億円ですから・・・
それなりのビジネスにはなるわけです。
あなたも、新聞や電車の広告で
「本にする原稿を探しています」
といった宣伝文句を
たびたび目にしたことがあるでしょう。

ともあれ、
自費出版花盛りといった感じですが、
多くの問題も出てきているようです。
読者が買わないから、
著者からお金を出させようという意図が
見え隠れすると批判する人もいます。
いろいろあるでしょうが、
多くの出版社が、売れる本の類似書ばかりを
追いかけることにも問題があるでしょう。

一方、定年後の余裕のある世代も増えて、
それなりに、自分の思いを込めた本を
作りたい人は増加し続けています。
結果として、儲けたいという出版社と
生きがいを実現したいと願う作者たちの間に、
ミスマッチが起こっていることもたしかでしょう。

小説、俳句、趣味、実用、絵本、写真集などなど、
定年後の夢を描き、
また、生きがいを見出すことは大切ですが、
退職後が、すべてがボランティアやロマンで
過ごせると思うのは間違いのもとです。

僕は、このコラムで、
「壮にして学べば、則ち老いて衰えず」
という言葉をよく引用しますが、
まさに、これが定年後の生きがいを実らせる、
したたかなる処世金言なのです。


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2005年6月30日(木)

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