第1036回
「本を書きたい」−定年後の生きがい
まえに「定年後を“定年後雑誌”作り」で
再出発した栗田さんという友人の話を書きました。
ま、栗田さんは、出版社の役員まで
勤め上げての再出発ですから、
若き頃の蓄積を生かして
第2の人生設計が出来たわけですが、
いずれにしても
「生きがい」につながる仕事が創造できる人は、
幸せだと思います。
メディア関係にいた後輩たちにも、
続々と、団塊の世代・定年退職者が現れて、
細々と小さな会社を作れた人、
それぞれ、子会社にしがみついた人、
給料は安くても
大学の講師くらいになれた人はいい方です。
とくに、マスコミ関係者は、
現業は派手ですが、お金に無頓着な人が多くて
昔、“お金の神様”の本を出したいと、
ベストセラー作家の邱永漢さんに本の依頼に来た、
大抵の出版社の担当者たちが、
「編集者ほどお金に疎い人種はいませんからね」と、
笑いながら、
やんわりとたしなめられたものです。
ま、退職後は“武士の商法”と似たり寄ったり
となって辛酸をなめることもありますから、
最後は、孫自慢か、昔自慢を繰り返して、
ますます、老けていく人が多くなります。
それはさておき、
多少、年金などで余裕のある人もいますから、
僕の後輩たちでも、
定年後のいきがいとして、
自分自身を集大成してみたいと意欲満々になって、
「本を書いてみよう」と思い立つ人もいます。
しかし、出版社やテレビ、新聞の仕事をしていた割には、
「本を出して売る」ことの難しさを
心底、分かっていない「お金に疎い」人も多いようで、
昔はアゴで使っていた、
出版社の後輩に自分の原稿を頼み込んでも
「なにせ、不況ですし、
5000部は売れない本は企画会議を通りません」と
断られて、アタマにきたりするものです。
ご存知のように出版界は未曾有の不況です。
本が昔のようには売れません。
ちなみに邱永漢さんが主宰する会合には
邱友会というメンバーの投資クラブのほかに、
邱番会というマスコミ関係者を集めた会合が
長年続いておりまして、
いろいろな景気予測や起業のご託宣を伺えるわけですが、
その挨拶の枕詞に必ず使われたのが、
「不況不況といわれますが、
とくに出版はその最たる業種です」
という話です。
というわけでしょうか、
この個人出版に目をつけた出版業が
結構、繁盛しているようなのです。
昔、自費出版というものがありましたが、
いまは「個人出版」とか「協力出版」などと称して、
小さな電子出版社のみならず、
背に腹は変えられないとばかり、
大手の出版社も、定年退職者や
ちょっと文章が書ける主婦たちをターゲットに
その「生きがい」をくすぐって、
このジャンルに乗り出しているわけです。
「本を作りました」「本を書いてみたい」・・・
僕のところにも
何人かの“定年後輩”たちから、
そうした相談が増えてきたのです。
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