元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第401回
慈恵医大事件に背筋が凍る!

東京慈恵会医科大付属青戸病院で、
前立腺ガン摘出の腹腔鏡手術を受けた男性が
大量出血で死亡――
新聞は異例の事件と報じましたが、
ドクハラ医師のメスを逃れて
ガン病棟を脱走した前歴のある僕にして見れば、
なんとも身につまされる医療ミス事件でありました。
記事を読むたびに背筋が凍るような気分にさせられました。

なぜか? ここまで酷くはないにしても、
多くのガン患者が、
いろいろなケースで未熟な医師たちの
「実験的手術」の餌食にさらされている――
これが現実だからです。
ガン病棟を体験した患者なら、
大半の人が手術にしても、
抗ガン剤の治験薬の投与にしても、
十分な説明もなく、また治療選択の猶予もなく、
「強要」いや「脅迫」されたような嫌な思い出が
1つや2つあるのではないでしょうか?

逮捕された医師の供述に寄れば、
はっきりと納得説明=インフォームドコンセントを
果たすこともなく、
ただ「実績を作りたかった」一心で治療したようですね。
患者を“実験動物”としか見ることができない
“医師の常識”が先行し、
患者のかけがえのない命を預かるという、
“人間の常識”を失ったところに、
この医療惨劇=ドクターハラスメントの問題点があります。

まえにドクハラ撲滅の提唱者・土屋繁裕医師から、
腹腔鏡手術とは、
患者のダメージを少なくする画期的な治療法である反面、
未熟な医師にかかると命を落しかねないとは聞いておりました。
また、下手な医師のメスにかかると大量出血で、
これまた命を落しかねないとも聞いておりました。
こんどの事件では通常7〜10時間で済む手術に、
約13時間かかり、5リットル以上出血したというのですね。
つまり、患者は総量として全身の血を失ったことになります。
さすがの警視庁も
医師の逮捕は不可欠と判断。
同病院内に「患者軽視」の体質もあったとみたようです。

いま、ドクハラといえば、
横柄な医師の言動ばかりがマスコミで取り上げられていますが、
現実の大学病院では
患者が命を引き換えにしなければならないような、
治療の横暴が野放しになっているといえないでしょうか?
医師は国家試験を通過してしまえば、
技量も人格も問われない、免許剥奪もされない、
そして治療の裁量権の範疇までも、
うやむやにしている大学病院システム、
いや、医療行政全体の構造改革が迫られているのです。

今回の事件については、
インフォームドコンセントの形骸化、
カルテの開示の是非、医師の裁量権と患者の権利、
はたまた医師の罰則制度の不備などが云々されていますが、
あらゆる面で医療情報の公開を渋ってきた
医師業界サイドの構造そのものに問題がある…
僕は患者の一人として、そう思えてなりません。
どれだけ多くの同輩たちが、
ガンではなく治療の間違いで命を落としていったか?
事件後、遅れ馳せながら泌尿器学会や内視鏡学会が、
治療の指針(ガイドライン)を作るとコメントしていましたが、
ただ、ほころびを繕うような、
ずさんな医療システムをいつまでも続けていて良いものか?
あなたはどう思いましたか?


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2003年10月2日(木)

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