元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第392回
40億年の「大河の一滴」!

ちょっと、産婦人科ドクハラという、
聞くも毒々しい医療現場の話が続きましたので、
もう少し、高尚に命そのものについての話に戻しましょう。
数回前に書いた…
生物40億年の歴史を知れば、
ただ死とは悲しいものなのか? 生とは何か?
そして、寿命を全うする意味は何か? 
その考え方が変わってくるという話しをもう少し考えてみましょう。

この「死と老化の生物学」
(A・クラルスフェルド F・ルヴァ著/ 新思索社)
といった、ちょっと難解な最新生物学の本が、
なぜ、いま面白いのか? 

それは顕微鏡学的な興味だけでなく、
長寿哲学についての答えも模索しているからだと思います。
大抵の宗教が、「死」=肉体の消滅
そして霊魂の不滅と教え、
その理由については「神」の成せるワザで、
人知の及ばないものと説いています。
しかし、生身の人間ならば
もう少し納得行く理由を探したらどうだ…
というのが、生物学書の裏にある提言だと思って読んでみましょう。

人間の「死や老化」とは、
ただただ、はかなくて悲しいものではなく、
数十億年の生命の営みの中にある、
自由奔放なものだ、とても意味の深いものだ――、
生物の遺伝子とは数十億年にわたって突然変異という知恵で、
生き残りの闘いを繰り返してきたのだよ――
だから、大宇宙、大自然、
いやサムシンググレートのうちふところに抱かれて、
人生を貫徹する意欲を湧き立たせましょう――
と生物学が宗教の境地まで踏み込んでいるからです。
わが命は生命40億年の大河の一滴――
わが命は宇宙自然の中の小さな命――
という発想です。
なんとも開放感のある、
ゆったりとした人生観をもたらすと思いませんか?

ただし、
わが命は生命40億年の大河の一滴――とはいっても、
最先端の生物学の本とは、宗教書とは違って、
事細かにミクロの命の世界を覗きつつ、
マクロな命の仕組みを
ダイナミックに分析証明して見せるわけですから、
「バクテリア」「ミトコンドリア」「線虫」といった
単細胞生物から
「DNA」「テロメア」といった遺伝子の世界まで
ある程度の専門知識がないと
読みづらいことは覚悟してください。


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2003年9月23日(火)

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