元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第377回
大往生、大安楽より大養生!

永六輔さんの「大往生」がベストセラーになったかと思えば、
一方で、老齢者には
「国立往生院でも作って安楽死させたらいい」という、
「大安楽」の提案が騒がれたことがありました。

大往生か? 大安楽か?
しかし、人生80年、いや寿命120年――
いまや長寿謳歌時代は長寿難病時代と変貌して、
世の大半の人たちが「元気に長生きこそ芸のうち」と
大養生を真剣に考えるようになりました。
快死のまえに快生を考える――
大養生に知恵を巡らせる――これはまっとうな考え方でしょう。

では、なぜ大養生を志向する人たちが増えたのか?
いくつか理由は挙げられますが、
ガン、心臓病、脳疾患、糖尿病といった
因果応報病ともいうべき難病が増えたこと、
それに対応すべき医療が追いつかないこと、
このふたつが大きな理由でしょう。
ぐずぐず長生きどころか、医療過誤で命を落しかねないーー
そんな長寿難病時代に突入したからです。

昔なら疫病や肺炎、
さらに栄養失調で短命を余儀なくされたわけですが、
長命長寿は
ガン、心疾患、脳疾患でぐずぐずと闘病する
突発性老化や慢性疾患をもたらしました。
おまけにいまや50歳以上の中高年世代が人口の半数に迫り、
平均寿命80歳とすれば、
後半生の30年、40年は夫婦二人で、
最低、一億円以上のお金の設計が必要です。
ある有名な医師がテレビで
「世界に冠たる日本の保険医療制度が長寿社会を作り上げた」と
自慢気に語っていましたが、とんでもありません。

いまや、大往生も大安楽もままならない長寿時代です。
往生とは元来“極楽浄土に行って蓮華の中に生まれ変わる”
という仏教用語ですが、
死ぬ、あきらめると言う意味にも使われます。
ですから、大往生という言葉の裏には、いかんともしがたい
生への“あきらめ”といった
アイロニー(軽い皮肉)が込められているわけですが、
人生80年、寿命120年が分かってしまったいま、
そうそう中年夫婦が「大往生」などと、
あきらめたり、笑いのめしているときではないでしょう。
いまや早め早めに「大養生」の知恵を磨いておくことが、
必要不可欠の50歳からの処世術となったのです。


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2003年9月8日(月)

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