元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第331回
人間、甘やかしてはいかん!

7月は「スローヘルス懇親会・夏休みin岩手」
宮沢賢治ゆかりの地、岩手県の東山町で開きましたが、
そのとき、訪問した有機農園と、
心の澄みきった農園主・鈴木昭平さんの話の続きです。
鈴木さんは開口一番、きっぱりとこう言い放ったのです。

「農家が莫大な借金までして、
何百万円もする耕作機械や化学散布薬を購入し、
大量の農薬まみれの米や野菜を都会に送り込む、
そうした農協指導の農業はおかしい。
僕はいつもこれが胸につかえているんです」

「一度、冷害で不作となれば、
借金を抱えたまま、農民は都会に出稼ぎに行かざるをえません。
わが子がこれでは農業をいやがるのは当たり前です」

「この数十億年の生物の歴史の中で、
一番、最後に生まれてきた人間どもが、
自分の身勝手で、
作物に殺虫剤なんかを撒くなど、
自然への冒涜も甚だしいのです」

背筋をピンと伸ばし、きっぱりと言い放つではありませんか?
どんな高邁な生物学や農学の大学教授の説教より、
ど迫力、説得力があるのですね。

もちろん、少年のような性格の明るさもあるのでしょう。
決して、高飛車な説教調でなく、
ユーモアでみんなを笑わせることも忘れないのです。
「とはいっても、私は“カバネヤミ”百姓です。
カバネヤミとは、こちらの方言では“ものぐさ”という意味で、
宮沢賢治のいう“デクノボー”百姓なんですよ、ハッハハ」と。
宮沢賢治の自然の心、命を大切にする考え方が、
地下茎のように鈴木昭平さんにも
受け継がれているのには驚きました。

たしかに自然堆肥で育つキュウリの葉は虫に食われておりました。
温室のトマト畑ではクモが自在に巣を張り、
根本の土壌からはキノコも生えている…。
畑という自然共存の小宇宙の中で、
なんとも昔懐かしい香りと味の野菜が育っているではないですか!

「余計な水や化学肥料を与え過ぎてはいけません。
甘やかして、ほしいものをあげてはなりません。
無闇と与えなければ、
作物ってヤツは自分なりに工夫して、
たくさんのよい実を成らせるように努力するんです」
人間とて同じですよ」
う〜ん! 自然のままに作物を育てることは、
人間の教育に通じるというのですね。
参加した通称・布袋さんという会社社長などは
社員やわが子供の教育法をしきりと反省しつつ、
畑のど真ん中で鈴木さんの前に座り込み、
「なるほど、ごもっとも」と聞き入っておりました。

その夜はホテルで開かれた特別講話は、
食養指導者・山村慎一郎さんの
「食事が人間の運命を変える」というテーマでした。
長崎の12歳少年の幼児殺し事件のように、
キレる子供が増えているのは、
スナック菓子や缶コーヒーなどを与えすぎる
親の育て方に問題があるという話でした。
まさに、人間の親も子も、
鈴木昭平さんのいう
「甘やかされた作物」と同じ運命を
たどっているのかも知れません。

「過ぎたるは及ばざるが如し」という諺がありますが、
有機農法家から、日頃、忘れかけている自然万物の理、
いや処世の原則を伺えたことは本当に幸せでした。

もはや少数派かも知れませが、こうした有機農園主がいるかぎり、
日本人の命を守る「食のライフライン」も
まだまだ見直しが利きそうではないか?
そんな希望が湧いてきました。
こうした体験懇親会はまた機会を見て企画したいので、
皆さんからも、よい知恵があったら教えてください。


←前回記事へ

2003年7月24日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ