第128回
「命は授る」のではなく「命は拾う」ものです
闘病1年たった正月こと、
放射線治療の後遺症で、
食道に岩のような塊が出来て、
「これはガン再発ではないか?」とあわてまくった話の続きです。
駆け込んだ病院の帯津医師は、
噂にたがわぬ、仏様のような柔和な顔の持ち主でした。
お会いするだけで
気が落ち着くのですから不思議な人です。
「生命在脚下 希望在心中」という金言を教えてくれました。
「命を救う方法はあなたのそばにたくさんあります。
前向きに心に希望を持ちましょう。
漢方や食事療法もありますよ。
いろいろ治療計画を練りましょう」と、
朝鮮人参など8種類の生薬を調合して、
漢方の煎じ薬をくれたのです。
その結果、なんと2週間後に岩のようにこびりついた
食道の塊がとれたではないですか?
もちろん、この漢方の煎じ薬の他に、
呼吸法によるエネルギーの補給や、
食事療法による選食と排便が体のサビ(酸化)を落とし、
予想外の免疫力、自然治癒力をもたらしましたと思います。
いま時代はスロー イズ ビューティフルが見直されています。
「ウサギと亀」「急がば回れ」の譬えではありませんが、
命の拾い方も「切った張った」の治療から、
ゆるやかな癒し=スローヘルスが必要だと実感しています。
その後、僕と同じように食道ガンを切らずに治している
作家の倉本さんから、
僕の闘病エッセイを読んだ感想が来ました。
「ガンジーは(注・筆者のこと)エッセイの中で
よく「命を拾った」というでしょう。
自信を失った患者は大抵が「与えられた命」といってしまう。
与えられた命といってしまったとたん、
思考停止になるというのが、ぼくの意見です。
「拾った」というのと「与えられた」との間には、
決定的な差異がある。
ここがガンに克つ「キモ」ではないだろうか?」
うん! しなやかな健康法=スローヘルス治療とは
医師任せではなく、「患者が主治医」「自分で命を掴む」
それが基本です。
帯津医師の漢方煎じ薬で、
食道から岩のような塊が消えたとき、
僕は本当に「命を拾った」と実感しました。
やはり、命は漫然と「授かるもの」ではなく、
じっくりと構えて、自分で「拾うもの」なのです。
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