中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4397回
違う日本が見えてきます

日本の地方都市で既存の商売が衰えて行くなかで
何とか自分の事業を維持し、
且つそれを逆に時代の先端を行く成長産業まで育て上げるのは
容易なことではありません。
でもそういう事業に従事して、
この不況の中を生き残った会社は、たくさんはありませんが、
どこの地方都市にもあります。

最近のこと、私はそうした企業をいくつか訪ねましたが、
業種は違っても共通していることは、
先ず第一に景気不景気にかかわらず
社会的に見て生活必需品であること、
つまり本人が売り込みに行かなくとも、その存在が認められれば、
コンスタントに売れる商品もしくはサービスであること、
第二にそこまで辿りつくだけの経営能力のある人が主催していること、
第三に同業者も思いつかないような合理化とか
コスト・ダウンに徹底していること、
そして第四にその結果、このきびしい時世でも
かなりの利益をもたらす業種であること、ではないでしょうか。
逆に言えば、競争者がたくさんいても、
同業者をだし抜いて生き残る企業ということになります。

かつて地方の顔役をつとめた造り酒屋や
米屋や宿屋や材木屋ではなくて、
その次にのしあがったガソリン・スタンドや
小型スーパーやドライブ・インがアップアップしているなかで、
地方地方で頭角を現わした新業種が
日本人にとって注目に値するだけでなく、
日本の後を追って高度成長国から安定成長国入りをする
中国の企業家たちにとっても
とても勉強になる新しい展開があることに気づいたのです。

たとえば、日本の農業は過渡期産業の代表みたいなものですが、
農林省や農協に叛旗をひるがえして
農業の企業化の先頭に立っている一握りの人がいます。
日本のような悪条件のもとで、
世界を相手に競争のできる農業企業家も
こうしたパイオニアの仲間に加えていいでしょう。
地方を車で走ると、
牧畜や養豚で一家をなしている人の多いことに改めて一驚します。
日本のビフテキはそのうちにトヨタやホンダの車より
世界で評価されるようになるのではないでしょうか。


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2012年3月24日(土)

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