第4391回
地震が教えてくれた30年の差
東北大震災が発生してから1年あまりの歳月が経ってしまいました。
地震の当日、私はたまたま北京にいたのですが、
テレビを通して次々と送られてくるニュースを見ると、
大へんな被害であるにも拘らず、
被害地では秩序を乱すようなことは何一つ起らず、
電車に乗るのだって、スーパーで物を買うのだって
ちゃんと行列をしているのを見て、
中国の人たちは驚きの色をかくせませんでした。
翌日の新聞やテレビを見ても、日本人を賞賛する声が高く、
日本人に対する評価は
かつてないほどストップ高したのではないでしょうか。
新聞やテレビを見ていると、
毎日のように中国の経済成長が報じられ、
あッという間に中国は日本を追い越すのではないかと
こちらが戸惑うほどですが、
同じように時間をあたえられた日本人が居眠りをしている間に、
中国人に追いつかれ、追い抜かれるわけではありません。
中国人が努力するように日本人も努力している筈です。
ただ、おかれた環境が違うので、
努力の中味も違うし、スピードも違います。
距離は近づいているように見えても
時間差が縮まったわけではないのです。
ですから、私から見ると、近代化のプロセスで
日本と中国の国にはまだ30年のひらきがあります。
その差が縮まったように見えても、
追いつくまでに中国の成長のスピードも落ちるようになって、
追いつきそうでなかなか追いつかないプロセスに入るのです。
現に日本の成長のスピードは落ちましたが、
スピードがおちたからと言って
成長がとまってしまったわけではありません。
たとえば自動車のつくり方や性能は
世界中からそっくり持ち込まれるので
すぐにも追いつくように見えますが、
自動車を運転する人のルールや常識や道路観念は
すぐそこまでは追いつきません。
人々の生活習慣が成長するまでにそれだけの時間がかかるのです。
その差はやっぱり30年と私は見ていますが、
その差を埋める学問やビジネスが
まだいくらでも目の前にころがっているのです。 |