中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4374
香港の経営者が知らない日本の法律

つい最近のこと、私が肩を入れている亨泰という
大規模農業の上場会社が持株に対して
2対1で有償増資を発表しました。
日本の証券会社で売買をしている人は、
日本の法律に従って海外の増資に応ずることができないので、
権利を放棄するか、増資前に株を処分して、
分割後にまた買い戻すか、
でなければ売っ払ってしまうよりほかありません。

これは外貨準備の脆弱だった時代に制定された日本の法律で、
これだけ外貨準備が豊かになったら、
とっくの間に改廃されるべきものを
政治家も証券会社も居眠りをしている証拠のような存在です。
でもこうした法律がある以上、
日本の証券会社も投資家も
涙をのんで断念するよりほかないのです。

但し、同じ日本人でも香港に口座を持っている人は香港人同様、
株主としての権利を行使することができます。
ですから中国株の売買をする人は
口座を香港に移す必要があります。
なぜなら株主割当の増資をする会社は
何も亨泰一社に限らないからです。
香港の証券会社は国籍に差別することはありません。
但し、海外で投資をする人に対して
日本の税務署にはそれなりの規定や監視の目があるようです。

にも拘らず日本からの投資家の中には
香港の上場会社は日本人投資家の利益を無視していると言って
批難する声もきかれます。
まあ、日本の投資家もかなりふえているのですから、
その人たちの利益も
考慮に入れてくれるにこしたことはありませんが、
香港の上場会社は
香港取引所の規定に従って動くのが建前ですから、
日本の法律まで考慮に入れるわけがありません。

でも増資発表と同時に、亨泰株が売られる場面もありましたので、
私たちが香港でひらいた株式研究会においでいただいた
亨泰の林國興董事長さんにそのことを知っているかときいたら、
「いや、全然知りませんでした」
という返事がかえってきました。
それはむしろ当然ではないでしょうか。


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2012年3月1日(木)

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