中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4337回
日本的情緒と文学を失った紅白歌合戦

人間が年をとるだけと思ったら、
国も年をとるらしいと申し上げましたが、
年をとりはじめると、
人も国も一番気にするのは、
中身よりも外見なんでしょうか。
その証拠にテレビを見ていても、
そこに映る人は見かけばかりを気にして、
頭の中がどうなっているか、全く気にしないようです。

ことしの正月は、
年末に高山病にとりつかれて身体をこわし、
いつもならあちこちとびまわっているのを一切やめて、
北京の自宅でおとなしくしていたことは、
この欄でも申し上げた通りです。
おかげで大晦日にはテレビの前に陣取って、
多分、10年ぶりくらいでしょう。
久しぶりにNHKの紅白歌合戦を見ることができました。
何年か前に旅先のホテルで歌合戦を覗いて、
出演者の1人が歌のセリフの中で
即席ラーメンとコーヒーの缶詰めは日本人の発明したものだ
と歌っているのをきいて大笑いをして以来のことですから、
歌合戦に立ち合うのは本当に久しぶりのことです。

しかし、こちらも年をとったせいか、
テンポが合わなくなって
番組が終わるまでつきあうのに大へんな努力を要しました。
頭の中で音が占めるスペースは一定していて、
若い時に入れた音で一杯になると
もうあとは一切受けつけない、
「だから懐かしのメロディが存在するのだ」
と言うことになりますが、
昨今の歌合戦は姿カッコばかり気にして
日本人の頭から「文学と情緒が失われてしまった」
のではないでしょうか。

高度成長の時代は演歌と浪花節をバカにするインテリも
少くありませんでしたが、
演歌と浪花節の中には日本人の心をゆさぶる
「恥の意識」と日本的情緒が溢れておりました。
それが私たちの心をゆさぶりましたが、
今や見る影もなくなって、
見かけ倒しのファッションと出まかせのセリフだけに
一変しているではありませんか。
あるいはそういう具合に受け取るのは
私が年をとった証拠かもしれませんが、
紅白歌合戦が日本的情緒と文学を失って
見かけ倒しになったことはまぎれもない事実でしょうね。


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2012年1月24日(火)

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