第4185回
全滅に近づく東京のレストラン業
東北大震災で日本国中の産業界が大きな影響を受けていますが、
なかでも一番ピンチにおちいっているのは
レストラン業ではないでしょうか。
罹災した地域の畜産家や農家の被害は
毎日のように新聞を賑わしているので、
誰でも大へんだなと同情していますが、
大都会に行くと、節電ムードもあって
町全体が暗くなってしまいました。
「夜が帰って来た」と言って私は喜びましたが、
それが続くと、人々は仕事が終るとすぐ家路を急ぐようになって、
買物をする人も、道草を食う人も、
まして夜遊びをする人は目立って少くなってしまいました。
デパートやスーパーなどは4時から7時までが勝負時ですが、
寄り道をする人が目立って減少したので、
営業時間を短くしたり、休みをふやす方向に動いています。
何しろ日本のデパートは年間の売上げの中で
最後の一ヶ月分が計上益になる構造ですから、
年間を通じて一割減収減益になっただけで、
利益が吹っとんでしまうのです。
それが前年比3割減などと発表されていますから、
流通業が如何に損害を受けているかわかります。
それに負けず劣らず、というよりも、
もっと広はんにわたって被害を受けているのは
レストラン業ではないでしょうか。
倹約ムードが浸透して1人前が2万円も3万円もかかる
高級レストランから客足が遠のくことは誰でも思いつくことですが、
そういう人たちが1万円か、
それ以下の店に動くことになるだろうと
タカをくくっていた私も、
日本に戻って友人を連れて安い店に入って見て、
すっかり驚いてしまいました。
昔はよく流行っていて、
いつも客で一杯だった中級レストランに予約をとると
その前日にすぐ予約がとれましたが、
店に入って見ると何と私たち一卓分しかお客がなく、
それも勘定支払って外へ出るまでそのままだったのです。
この調子ではレストランの店じまいがはじまって、
青山通りや六本木の表通りから裏通りまで、
シャッター通りになるのではないかという予感が
私の背すじを走ったのです。
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