中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4105回
なぜゼイキン報告がベスト・セラーズに

私に新聞の連載を依頼に来られた日経の部長さんに
「何か書きたいことがありますか」ときかれて
「税金」と答えたら、
「いくら邱センセイに自信があっても、
あんな面白くないテーマでは」
と即座に反対されましたが、
私が世の中の移り変わりを色々と説明すると、
無下に反対することもできなくなって、
「実は私もこのポジションに長いので、
来年の三月で人事異動になる可能性があります。
次の人はまた次の人の考えがありますので、
三ヵ月の連載ではどうでしょうか」
と逆提案されてしまいました。

万一、そんなことになったら、
よその新聞か雑誌に引越して後を続ければいいさと
内心自分に言いきかせて、
私は「ゼイキン報告」と題して
日経の夕刊に週一回の連載を開始しました。
一般の税金の解説書と違って、
小説家の筆になる税金のよもやま話ですから、
堅苦しくもないし、身近な話題でもありますから、
一ヵ月もしないうちに編集会議で
「ご自分の好きなように連載して下さい」と結論が出て
「ゼイキン報告」は読者の人気を呼び、
忽ち文芸春秋をはじめ、
他の出版社からも単行本の申し込みがありましたが、
当時の日経の出版局長さんは私の絶大な支持者でしたから、
よそへ持って行けるわけがありません。

一冊分書き終わって日経出版局から単行本になって出版されると、
たちまちベストセラーズの仲間入りをし、
喜んだ出版局長さんが私のところに挨拶に見えたので
「よかったですね」と私も応じたら、
「どうしてベストセラーズになったかご存知ですか?」
とききます。
「いえ、どうかしたんですか?」とききかえすと、
「いや、世の中にはあわて者がたくさんいてネ、
パッと見た途端にキンゼイ報告と間違えて
買って帰るんだそうですよ、アハハハ・・・・」

キンゼイ報告がベスト・セラーズを続けた時代に
そのおこぼれをいただいた笑話が今も残っています。
というのも税金の本と言えば、
国税庁の役人と税理士の書く物ときまっており、
税金を払う人の書いた本は私がはじめてだったのです。


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2011年6月6日(月)

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