第3980回
有名レストランは絶滅の方向へ
中国で人手不足がはじまって一番私をびっくりさせたことは、
従業員が会社に賃上げを要求する代わりに
さっさと会社を辞めて、他の会社に転職をしはじめたことです。
日本なら社員が団結して組合を通じて賃上げを要求し、
それが容れなかった場合、ストで抵抗したのに対して、
中国ではいとも簡単に辞職する道を選んだのです。
会社を辞めて他社に転職すれば、
どこも今より高い賃金でやとってくれるので、
争うことなしに目的を達することができます。
一見、平和な解決法ですが、今までと違う仕事に移るので、
本人もはじめからやりなおしですが、
会社にして見れば仕事に慣れた従業員がいなくなってもう一度、
職業訓練からやりなおしです。
熟練を必要とせず、
機械を動かすだけで寸分違わない製品ができてくるのなら
それでもかまいませんが、
料理をつくるとか、
客商売だと常連が一見さんになってしまいますから、
歴史のある店ほどあがったりです。
今回、中国のあちこちを歩いて一番驚いたのは、
上海でも成都でも北京でも
有名レストランの驚くほどの凋落ぶりです。
責任者まで一せいに辞めてしまうので、采配をする人がいなくなり、
料理の味は変わってしまうし、
料理を出す人は慣れない手付きなので、
勝手が違ってはじめてくる店よりも
勝手知った店ほどいらいらしてしまうのです。
たとえば上海の「小南国」は
若い女性がスタートした新上海料理の有名店で
北京や香港まで何十軒もの支店を出して、
私の「実務手帖」でも紹介していますが、
久しぶりに新天地にある「小南国」に食事に行ったところ、
サービスをする従業員から料理の味まで一変してしまいました。
炊事番も客扱いをする表までトップが変わってしまったので、
采配する人もいないし、紹興酒を頼んでも、
ワインを指名しても、あれもない、これもないで、
青島ビールでやっと口をふさいだ始末です。
この調子ではレストランも料理人も支配人も一族だけの
1軒の店しか生き残らないのではないでしょうか。
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