第3635回
冒険をしない社会体制が定着
いま日本の大半の上場会社の社長さんは
その会社の大株主ではありません。
会社によっては役員になると
若干なりと会社の株を持つ規定がありますが、
そういう会社ほど大資本によって運営されていますから、
社長や会長の持株など知れています。
それでも社長がつとまるのは、経営と所有が分離されていて、
大株主といえども企業に対する発言権が分散されていて、
経営はその会社の経営陣にゆだねられている社会制度が
定着してしまったからです。
そういう会社では大抵の場合、
社長か会長が人事の実権を握っていて、
実権を握っている人が次の社長をきめます。
会社の役員の中で社長の次席をつとめる人が
指名されることが多いようですが、
社長が特に信頼している人が抜擢されることも、
もちろん、あります。
その場合でも
社外から次の経営者を迎え入れることは先ずありません。
実力のある会社ほど社内で決着しますから、
サラリーマン重役から
またサラリーマン重役に受けつがれることになります。
こうした制度が定着すると、次期社長は任期2年として、
1期か2期か、長くて3期が普通ですから、
新しく社長さんに任命された人は自分の社長在任中に
絶対冒険をしないことに主眼をおきます。
絶対失敗を演じないためには
出しゃばったことをしないことですから、
誰一人、失敗するかも知れないことには
手を出さなくなるということにほかなりません。
つまりサラリーマン資本主義が定着すると、
社会全体が冒険をしなくなり、創業者がかって試みたような
新規の大展開は先ずあり得ないということになります。
日本経済が全体として活気を失ってしまったのは、
成長経済が終って成熟社会に移向してしまったからだと
位置づけることもできますが、
創業者の活躍した時代から
あとを守るサラリーマンが
事業を経営するようになったからだと見ることもできます。
ですから日本がまた前に戻ることはあり得ないのです。
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