中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3626回
銀行よ、もう一度、昔に戻れ

私が知っている範囲でも、
少し前までは信用組合や信用金庫は地元で集めたお金を
地元で商売をやっている人たちに貸すのが常識でした。
ですから商売がうまく行っているかどうか、
支店長や行員は取引先に細心の注意を払い、
少しでも商売に役に立つことには
力を貸すことを惜しみませんでした。

ところが、国債や社債はもとよりのこと、
外国の投信や社債まで投資の対象になるようになると、
もっと割りがよくて、しかも誰が見ても絶対安全な投資対象が
次から次へと持ち込まれるようになって、
取引先の商売のことまで
いちいち余計な心配をしなくてすむようになりますから、
銀行員はいつの間にか、サラリーマンの中でも
最も怠け者の部類に属するようになってしまいました。

そういう銀行に、ピンチにおちいった取引先を助けるために、
金利を引き下げてあげても、
安全で有利な債券を買うか、
同業者でM&Aでうつつを抜かしている取引先にお金を貸した方が
何もしないでヌクヌクと暮らすことができますから、
銀行は地元の商売がどうなろうと気にしなくなってしまいました。
バブルのはじけたあとの只のような安い金利でも、
産業界の恢復に手間取ったのは、
日本銀行や財務部のお役人さんが実際に起っていることについて
うとかったからだということになります。

いまアメリカで金融業に大ピンチが起って見ると、
付加価値を生むことのない産業に投資して
お金にお金を生ませるビジネスが
如何に空しいものであるかわかります。
しかし、そのために大きなお金が動きますから、
それに従事する人たちは法外な報酬にありつくことができるし、
自家用飛行機に乗って会議や商談に出かけることもできます。
従って政府の援助によって奇跡的に立ち直ることができたとしても、
大きなサイクルをえがいてもう一度、
同じことをくりかえすことになるのではないでしょうか。
ですから金利を安く維持するよりも、
銀行が地元の商売の面倒を見る昔にもう一度戻ることに
私も賛成です。


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2010年2月12日(金)

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