第3573回
労働は価値を生むが、黄金は生みません
いくら金本位制に戻る可能性がなくても、
金が買われるスキマは残っています。
ドルの値打ちの下落するチャンスがこれだけふえれば、
ドルを持つより、もっと安心のできる貴金属にでも
換えておこうかと考える人がふえるからです。
私はアメリカが金本位制から離脱した時、
そういう考え方に加担しました。
金で持っておれば、お金はふえないけれども、
財産を人に知られずにこっそり
保存することができるのではないかと思ったのです。
昔の人が大判小判を甕(かめ)の中に入れて
土の中に埋めておく心境です。
中国ではそれを人にさとられるのを心配するあまり、
「ここに銀300両は埋められておりません」
と看板を立てたという笑話が残っています。
いまはセイフティ・ボックスの中に、
家族にも知らせずにこっそり蔵い込んでおくということでしょう。
しかし、今と昔は違います。
金塊や金貨にしてセイフティ・ボックスの中にしまい込んでも、
金は死蔵されているだけで何の付加価値も生みません。
グローバル化の時代と封建君主制の時代は違います。
いまの時代を大きく左右するのはむしろ石油であって
黄金ではありません。
石油なら用途もありますし、世界経済を大きく左右もします。
金は貴金属として相場があると言っても、
アクセサリーになるか、
入れ歯に使われる程度の用途しかありません。
従っていつまでたってもそのまま物として残っていて
精々政府の地下の金庫の中に死蔵されているだけです。
金の方が紙よりはましだというそれだけの理由で
投資の対象になると考えるのはもちろん人それぞれの勝手ですが、
私なら金貨にお金を投ずるより生活に必要な必需品に注目します。
ですから昨年、山東省の有力企業を見学に行った時も
招金鉱業を訪問しましたが、
株を買おうかという心は動きませんでした。
あの時、3.5ドルまで下がっていた招金の株は
いま14ドルあまりになっています。
株価を動かす投資家の心理はこんなものだなあと
株価に教えられても、
「しまったなあ」と思う気持は全くありません。
それが私の通貨に対する基本姿勢だからです。
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