中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3572回
金本位に戻る可能性は全くありません

金貨が物々交換の仲介として通用していた時代も、
王様たちは金に困ると、
金貨の中の金の量を減らすように
くりかえし通貨の改鋳をしてきました。
紙幣が硬貨に変わるようになると、
色々と理由をつけて紙幣の発行量をふやして
急場をしのぐようになりました。
そのうちに紙幣を金貨に換えるほどの金貨がないことは
誰にもわかるようになり、
ニクソン大統領の時代にドルが先ず金にリンクすることを辞め、
更にアメリカの台所が苦しくなると、
遂に輪転機をフル回転させて
ドルを印刷しまくるようになりました。
ドルが世界通貨として通用していることを奇貨として
アメリカの政府が率先して
紙幣を通貨として通用させるようになってしまったのです。

それでもドルが世界通貨として通用しているのは、
アメリカの政府と経済に信用があったのと、
ほかにそういう役割をはたしてくれる通貨がないからですが、
アメリカ政府がそれを奇貨として
自分勝手に印刷したドルで世界の財貨を買いまくると、
ドルそのものの貨幣価値が下げ続けるよりほかなくなります。
しかし、そうなると物を売った代金として
ドルを外貨準備として莫大に所有している
中国や日本や産油国の政府は大損をさせられますから、
無理をしてドルを買い支える立場に立たされます。

それでもなおアメリカがドルの印刷を続ければ、
ドルを世界の通貨として通用させる代わりに、
それにとって代わる役割を果たす新しい通貨システムを導入するか、
でなければいっそ元の金本位制に戻ろうじゃないか
という意見が頭をもたげてきます。
つまり金がとりあえず高値まで買い上げられるということは
通貨としてのドルの不安を反映して起ることであって、
昨今のようにアメリカを先頭にして金融不安が発生すれば、
金が更に高値を呼ばない方がむしろどうかしているのです。
しかし、それで金本位に戻る可能性は万に一つもありません。
なぜならば、これだけ大きくなった世界経済の仲介をするには
黄金はあまりにも僅かしかないからです。
金が紙に変わることはできないにきまっているからです。


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2009年12月20日(日)

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